3-19 ページ19
Aは珍しく1人でいた。
ロンとハーマイオニーは、クルックシャンクスがスキャバーズを襲ったことで暫く揉めていたが、ホグズミードに行けないハリーの落胆っぷりを見て水に流したらしい。
ハリーが落ち込んでいる他は平和で、暇だった。
「…おい」
「まあこんにちは、どうしたの？」
声をかけてきたのはドラコだった。
きょろきょろと辺りの目を気にしながら、彼は近づいてくる。周囲には親しい友人こそいなかったが、他学年の生徒が何人かいた。
「おい」と呼んだ辺り、どうやらまだ名前では呼べないらしいが、人がいても話しかけれるようになったらしい。Aはそれが嬉しくて、にこにこと挨拶をした。
「これ」
ドラコはぶっきらぼうに手に持っていたものを押し付けた。素直になれないお年頃なのである。
彼が渡したのは大きさが折り紙ほどで薄い包みだった。綺麗にラッピングされ、緑のリボンがついている。彼らしいと思った。
「？ なあに、これ」
「後で開けてくれ」
「今はだめ？」
「急いでいるから。話が長くなるだろう」
嘘だった。
本当はもっと長く話したかったが、直にパンジーがドラコを探しに来るだろう。Aとパンジーを鉢合わせたくはなかったし、惜しくも断念せざるをなかったのだ。
「わかったわ、ありがとう。後で開けるわね」
「ああ、そうしてくれ」
「怪我はどう？」
「痛むけど順調だ。…ああ、そうだ、一ついいか。この間のことなんだが…」
ドラコはまた周りを見て知り合いがいないのを確認すると、顔をAの耳元に近づけ、口を開いた。
「その…キス、しただろう。おでこに…」
ドラコはごにょごにょと小さな声で尋ねた。
Aは思い返す。額にキスなんてしたかしら？と。
「…ああ！ごめんなさい、嫌だった？私、その、弟と妹がいるから、よくやるのよ。よく眠れますように、って」
別に、誰にでもやるわけじゃないわ、とAは付け足す。
ドラコは、へえ、じゃあ僕は特別なんだなと思った。嬉しかったので、「いや、別に、良いんだ」と答えた。自分が子供扱いされているのに気づいていないのである。
「良かった。私、そろそろ戻るわ。あなたも急いでいるんでしょう？怪我、お大事にね」
Aは安心したようににこりと笑ってからその場を離れると、数メートル進んだところで振り返り、「これ、ありがとう」と包み紙を指して再度お礼を言った。
ドラコも口角を上げる。Aのそういった丁寧なところが好きだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2200人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハリーポッター」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雪だるま - おかえりなさい！ずっと待ってました！ (9月28日 1時) (
レス) @page49 id: 34bbee5856 (このIDを非表示/違反報告)
ゆんた - とってもおもしろくて大好きです！いつか更新されることを待っています…！ (7月11日 18時) (レス) @page46 id: 0356e4ada2 (このIDを非表示/違反報告)
まな(プロフ) - 続きが楽しみです！気長に更新待ってます！ (6月20日 8時) (レス) @page44 id: 0028381799 (このIDを非表示/違反報告)
しろごま(プロフ) - この作品大好きです〜！！とても読みやすいですし、話の流れがわかりやすいです！！更新楽しみに待ってます！ (2023年3月25日 8時) (レス) @page41 id: 4dc97dea49 (このIDを非表示/違反報告)
ふゆな(プロフ) - はわ…素敵な作品をありがとうございます😭💗 これからの更新楽しみにしています！！！ (2023年2月23日 22時) (レス) id: 676d8245fd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：深海
| 作成日時：2021年4月20日 22時
