あなたの匂い【土方十四郎】 ページ47
ゆっくりと意識を浮上させる。どうやら私は眠ってしまっていたようだ。しかも、十四郎の部屋で。これはまずい。絶対怒られる。身体を起こしてみると、上には十四郎の隊服がかけられていた。興味本位で手に取り、そっと鼻を近づける。
「……いい、匂い…好きだなァ……」
煙草と彼の匂いが混ざっている。私が好きな香りだ。隊服をぎゅう、と抱きしめてしばらく匂いを嗅いでいた。
突然、襖が開くと同時に間の抜けたような声が聞こえた。
「は……?」
しまった、と思った時にはもう遅い。この光景を、あろう事か十四郎本人に見られたのだ。どう言い訳しても、きっと……。
「…何かわいいことしてんだ」
「え…?」
十四郎は私から隊服を取ると、腕を取って立たせた。引っ張られた反動で彼の胸にぽすりと抱きつく。
「で、俺の匂いがどうしたって?」
腰に手を回され、ぐっと抱き寄せられる。さらに距離が近くなって、さすがに恥ずかしい。両手で押し返そうとすれば、今度は顔が近くなって、綺麗な彼の瞳に私が映る。とても、動ける状態じゃなくなってしまった。
「答えてくれねェなら、離さねェ」
青くて綺麗な彼の瞳が、真っ直ぐ私を捉えていて、なんだか力が入らなくなる。心臓の音が彼に聞こえそうなほど早い。
「…答えてくれ」
「い、いい匂い……」
「そうか…お前は、それ好きなのか?」
「うん、好き…」
その一言を告げると、彼の腕の力が緩まった。距離を少しとって彼を見れば、耳はほんのり赤に染まっている。
「あの、十四郎…」
「よかった…煙草臭いとか言われなくて…」
心底ほっとしたように言う彼。私のさっきまでのドキドキを返せ、と叫びたくなった。でも、私の心臓はまだ早い。
「ふっ、お前顔赤いぞ?」
「と、十四郎のせいだし!」
「そうかよ。な、ここ触ってみろ」
手首を掴まれて、そのまま彼の胸、ちょうど心臓のあたりに誘導される。そこは、私と同じくらい早くなっていて。
「え、と…十四郎……」
「俺だって、ドキドキしてたんだ」
あんな余裕そうに言っといて、ドキドキしていたなんて……。なんだか笑えてきてしまった。
「ふふ、一緒だね」
「笑うなよ、ったく…」
なんて言いながらも、彼の口角は上がっている。
「俺も、お前の匂いが好きだ。何か安心する」
「私だってそうだもん」
「……お互い、大好きだな」
「うん、そうだね」
こういうのも、たまにはいいかもな、なんてお互いに顔を見合わせて笑った。
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苺みるく - 読んでて、めっちゃドキドキしました!これからも、応援しています! (2018年12月7日 21時) (レス) id: d9dead7c75 (このIDを非表示/違反報告)
桜ノ華(プロフ) - 土方美夏さん» もったいないお言葉ありがとうございます!これからもよろしくお願いします*_ _) (2018年12月3日 21時) (レス) id: 7f3516e8f4 (このIDを非表示/違反報告)
土方美夏 - ありがとうございます!素晴らしかったです!これからも頑張ってください! (2018年12月3日 20時) (レス) id: db9e24e33f (このIDを非表示/違反報告)
土方美夏 - ありがとうございます! (2018年12月3日 17時) (レス) id: db9e24e33f (このIDを非表示/違反報告)
桜ノ華(プロフ) - 土方美夏さん» リクエストありがとうございます!わかりました、書かせていただきますね! (2018年12月2日 23時) (レス) id: 7f3516e8f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜ノ華 | 作成日時:2018年11月18日 18時