逃げるな【高杉晋助】 ページ43
追っ手から逃げている最中、ここならばと入った路地裏で、とん、と誰かにぶつかった。
「わ、ごめんなさ……」
謝りながら顔を上げた先にいた人物は、攘夷戦争に一緒に参加した、高杉晋助だった。
「…っ、晋助…助けて…」
そう言うと彼はすぐに事態を察してくれたようで。私がつけていたカツラを取って隠し、鮮やかな紫色の羽織で私を包み、そっと口付けた。
「おい、ここに女が来なかったか?」
「…さァ…俺たちはここにいたが、来なかったなァ」
「そうかい、邪魔したな」
追っ手が来て内心ヒヤヒヤしたが、晋助が上手く返し、彼らの足音は遠ざかっていった。
「晋助、ありがと……もう大丈夫…」
そう告げると彼はそっと離れた。
「でも、どうしてキスなんか……」
「…色々と聞きてェが、とりあえず今はまだ逃げるほうがいい。行くぞ」
私の手首を掴んで、晋助は走り出した。
「え、ちょっと、晋助……!?」
「静かに。騒ぐとまた口を塞ぐぞ」
「なっ……!」
その言葉に私は息を呑む。
「ククっ、冗談だ」
笑いながらそう言う彼。冗談かよ。私のドキドキを返してくれ。なんて心の中で文句を言っていたら、着いたのは鬼兵隊の船だった。静かだ。
「さすがにあいつらも寝静まってんなァ……」
中に案内しながら、彼はぽつりと呟いた。
「…俺の部屋で、話聞かせてもらおうか」
彼の部屋で、お互い向き合って座る。
「お前ェさんも聞きたいことがあると思うが、俺から質問させてくれ。あいつらは一体なんだ?」
どうして追われていた、と続ける彼の瞳は真剣だった。
「……まァ、色々とありまして…」
「色々と、じゃわかんねェが…言いたくないってんなら無理には聞かねェ」
紫煙を燻らせながら彼は言った。ごめんなさい、晋助……。あなたを巻き込まないためには、話さない方が懸命だって判断したの。だから許して……。
「…あの…どうしてあの時、晋助は私にキスなんて…」
「あァ、あのことか。そうでもしねェとバレちまうだろう?」
「でも、だからってほんとにキスするなんて…フリでもよかったじゃない…」
「本当にしていた方がリアリティがあるだろう?」
クク、と怪しく笑いながら彼は言った。変なところが細かいんだから……。でも、これでも一応追われる身。この先どうしようか……。
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苺みるく - 読んでて、めっちゃドキドキしました!これからも、応援しています! (2018年12月7日 21時) (レス) id: d9dead7c75 (このIDを非表示/違反報告)
桜ノ華(プロフ) - 土方美夏さん» もったいないお言葉ありがとうございます!これからもよろしくお願いします*_ _) (2018年12月3日 21時) (レス) id: 7f3516e8f4 (このIDを非表示/違反報告)
土方美夏 - ありがとうございます!素晴らしかったです!これからも頑張ってください! (2018年12月3日 20時) (レス) id: db9e24e33f (このIDを非表示/違反報告)
土方美夏 - ありがとうございます! (2018年12月3日 17時) (レス) id: db9e24e33f (このIDを非表示/違反報告)
桜ノ華(プロフ) - 土方美夏さん» リクエストありがとうございます!わかりました、書かせていただきますね! (2018年12月2日 23時) (レス) id: 7f3516e8f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜ノ華 | 作成日時:2018年11月18日 18時