第37話 無実の証明 ページ39
Aが再び目覚めた瞬間と同時期、鸕宮本家では暴走事件の張本人である分家の少女、早百合の処罰についてを一族総出で話し合っていた。
最早これは、他所者の陰陽師を瀕死に追いやっただけでなく、あの鸕宮家が学校をも巻き込もうとしたという、一族の誇りを地に落としかねない事件だった。
早百合を囲むように座っている鸕宮家の幹部や傘下の家の当主達は、こぞって早百合を非難した。
勘当だ、出て行け、恥晒し…そんな言葉をまだ十六の娘にぶつけるなど、本来あるはずのないことだ。
しかし罵声が止むことはなく、早百合は肩を震わせて、か細い声を出し、口を開いた。
「違うんです……本当に、私、その時の記憶がなくて……………」
「まだ言うか!この小娘!お前が、天馬様がご寵愛なされていた従者の少女を、瀕死に追い込んだのだろう!」
「言い訳も大概にしろ!さっさとこの家から出て行け!」
本家の幹部すらも怒鳴り声を上げ、早百合はいよいよ涙が溢れ出てきた。
「お待ち下さい!」
ピシャリと開いた襖の音と共に、Aが甲高い声で叫ぶ。
背後には有馬がおり、まだ安静にしないといけなかったAをここまで運んでくれたらしかった。
天馬の顔色が変わる。
「A…!まだ安静にしてねえと……!」
「私は大丈夫です。それより……天馬様…彼女の処遇について、どうか、ご再考を……!」
起きてまだ数分の頭をフル回転させて、この状況の打破に挑む。
そして、Aが早百合を庇ったことに一番驚いているのは、早百合自身だった。
「あ、貴方……殺されかけたのになぜ……」
「彼女には、別の何者かの陰の気が取り憑いていたのです!彼女は、悪くありません!」
Aは、早百合を指差して言い放つ。反応したのは、傘下の家の当主だった。
「は?何を言っているのだ。そこの娘………」
「Aちゃんの言っている事は本当だよ。」
助け舟を出したのは、有馬だった。
「そこのお嬢さんには確かに誰かの意思によって陰の気が貼りつかれていた。それが今回、何者かに引き金を引かれて暴走したというわけだよ。証拠に、お嬢さんが眠っているとき、誰かに呪詛をかけられた跡が見つかったしね。」
「そうです!だから、あれは彼女自身の意思じゃないのです!本来の彼女が、ああでなかったのは、皆さんがよくご存知ではないのですか!?どうか、考えて直して下さい…!」
会議が静まりかえった。
天馬は一人、くくく、とお腹を抑えて笑っていた。
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あとり - ありがとうございます!大変遅くなりましたが更新させていただきました! (2018年2月13日 0時) (レス) id: ce2f790ea1 (このIDを非表示/違反報告)
(* ´ ▽ ` *) - 続きはまだですか?とても面白いので、更新頑張ってください! (2018年1月28日 15時) (レス) id: 18290c3fc7 (このIDを非表示/違反報告)
ちっち - あとりさんこの小説大好きなので、頑張って更新してください! (2017年12月29日 9時) (レス) id: d069e4a0a4 (このIDを非表示/違反報告)
あとり - 夜実さん、すみませんでした!ご指摘ありがとうございます!気をつけます! (2017年3月30日 0時) (レス) id: 493c050031 (このIDを非表示/違反報告)
夜実 - 47なのに46になってますよ〜(このコメント消していいです) (2017年3月29日 23時) (レス) id: 180bd39056 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あとり | 作成日時:2017年2月17日 7時