第34話 中庭での私闘 ページ36
Aが登校して数十分経った頃、天馬の元に従者が駆け寄ってきた。
「大変です。A様が…………………!!」
天馬は、青陽院へと走り出した。
時を同じくして、青陽院のとある中庭では、生徒同士の私闘が繰り広げられていた。
二人の可憐な女子が、容姿に似合わず怒りに満ちた戦いをしている。
一人は、嫉妬からの怒り。もう一人は、大切な人をけなされたことからの怒り。
二つの怒りが、火花を散らしてせめぎ合っているのだ。
そんな二人の私闘は、少しずつ、観衆にさらされていった。
「はぁぁぁああッッ!!」
鸕宮家の子女は、双剣を使って斬撃を放つ。しかしそれをAは学校用に貰った剣ひとつでさばいていた。
鸕宮家の子女は、次に距離をとって速さで勝負をしにくる。撹乱させるように残像をつくりながらAの周りを駆け回る相手に、Aはどうしようもなく、上へ跳んだ。
しかしそれを見越していた相手は、すかさずAの後ろへ回り込む。背中を狙った相手に、Aは思いきり後ろ蹴りを放った。
「きゃアァッ!?」
地面に叩きつけられた相手は、先程とは比べものにならないくらいの憎しみを込めた瞳を持って立ち上がった。
「くそ、くそ、くそ……!この、他所者の糞女め……!!」
最早彼女の目は、年相応の少女の目ではなかった。まるで、親の仇を見ているようなその目に、Aは背筋が凍りつきそうだった。
しかしそれ以上に、Aの怒りは強かった。一番大切な人を、ああも言われれば、誰だって怒る。
「…………謝れ。そうすれば、貴方を許して差し上げます。」
自分とは思えない位冷たい声が出た。しかしそんなAとは反対に、相手の顔はいよいよ怒り狂ったような形相になっていった。
「死ね!!この糞女……!!」
そう言うと、相手は更にスピードを上げて斬撃を放ってくる。Aは防ぐので手一杯だった。
しかし、怒り狂った相手の動きは単純で、Aはちょっとした隙を見逃さず、相手を剣の背で思いきり弾き飛ばした。
今度こそ地面に倒れたままになった相手を見て、Aはようやく正気に戻った。
「って、ああああああ!!すみませんでしたぁぁぁぁ!!」
御恩がある鸕宮家の御息女相手に、私闘をしてしまうなんて………
もう、終わりだぁ………勘当だぁ………
観衆がざわついているのにも、まったく耳を貸さなかった。
それが、自分への危険を知らせるものであったのに。
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あとり - ありがとうございます!大変遅くなりましたが更新させていただきました! (2018年2月13日 0時) (レス) id: ce2f790ea1 (このIDを非表示/違反報告)
(* ´ ▽ ` *) - 続きはまだですか?とても面白いので、更新頑張ってください! (2018年1月28日 15時) (レス) id: 18290c3fc7 (このIDを非表示/違反報告)
ちっち - あとりさんこの小説大好きなので、頑張って更新してください! (2017年12月29日 9時) (レス) id: d069e4a0a4 (このIDを非表示/違反報告)
あとり - 夜実さん、すみませんでした!ご指摘ありがとうございます!気をつけます! (2017年3月30日 0時) (レス) id: 493c050031 (このIDを非表示/違反報告)
夜実 - 47なのに46になってますよ〜(このコメント消していいです) (2017年3月29日 23時) (レス) id: 180bd39056 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あとり | 作成日時:2017年2月17日 7時