【派生作品】Er und Ich. / 彼と僕。

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「…あの」
「ネエ、」

　言葉が重なってどきまぎする。しかしミヒャエルに「ナニ？」と促されて、今日ずっと思っていたことを、口に出す。

「ミヒャさんって、その、……楽しいですか？ 僕なんかと、いて」
「ア、それ俺も聞こうとしてタ。俺は楽しいけド、澪はやっぱ楽しくなイ？ 俺『友達』との距離感わかんなくっテ」
「違くて、……急に写真撮られたのとかびっくりしたし、でもそれはミヒャさんのこと推してるから、同じ枠の中に入るのにこんな格好じゃとか思ったからで、……」

　何を言いたかったのか、自分でも分からなくなる。ミヒャエルが頬杖をついて、少し首をかしげて澪を見ている。けれども急に

「エ、俺のこと推してるノ？」
「あ」

　口が滑った、と思った。

「えあ、あわわわわ、推してるってのは夢とかそういうのじゃなくて、あの、」
「ユメ？っテ？」
「夢、夢ってのは、その……」

　まごついていると、ミヒャエルが不意にからからと笑った。

「澪ってサ、真面目だけどテンネンとか言われなイ？ ステージに立ってる時と全然違ってさア。カワイイ〜」
「っかわ……？ そんなこと、」
「ネエ、」

　急に、金色の瞳にきゅっと目を見据えられる。それから、その瞳がゆっくりと細められる。

「俺のコト、友達にしてヨ。推しじゃなくってサ。まだどれが素とか分かんないけド、もしビックリした時が素なんだったラ、その喋り方が俺は好キ」

　溶けた氷が、またコップの中でカランと音を立てた。

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