【派生作品】Er und Ich. / 彼と僕。

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「ううん。大丈夫だよ。ちょっと考え事してただけだから。」

幸か不幸か、ミヒャエルは澪が嘘をついていることが分かってしまった。
理由はない。強いてあるとするならば、『澪らしくなかった』

いつもみたいに寝ぼけているならまだしも、食事中に澪が今のような様子だったことは(少なくともミヒャエルが見た中では)なかった。

「(一体何を隠しているのだろう。)」

人間誰しも隠し事は気になってきまうものだ。
可能な限りで頭の中でいろいろな考察を繰り広げているうちに、澪のお皿からオムライスは無くなっていた。

「ん。ごちそうさまでした。」

澪はゆっくりと立ち上がり、ミヒャエルの食器と重ねて台所へと持っていき、何事もなかったかのように食器を洗い始めた。

「ア！！ごめン！洗い物まで‥。」
「大丈夫だよ。ミヒャよりは慣れてるから(笑)」
「ナ！！洗い物くらいできるシ！！」

ミヒャエルはちょっと強めに反論した。
そうすると澪は少し笑みを溢してから続けた。

「あはは。じゃあ、少し手伝って貰いたいな。」

いつもよりも少々幼いようにも聞こえる声でミヒャエルに言った。
意識しているのかしていないのかはわからないが、はたまたミヒャエルの思い込みが激しいのか、上目遣いになっているような気さえする。
急激な変化に驚きを隠せず、返答できずにいると、またもや澪が続けた。

「あ‥‥。やっぱりダメ？」
「ア！いヤ！ううン！！手伝うヨ！！喜んデ！！」
「喜んでって‥。まあ、ありがと。」

今の言動からして、澪は声も上目遣いも意識的ではないことがわかった。
ミヒャエルは学んだ。『無自覚ほど怖いものはない』と。

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