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朝が来ない世界ならば― (65) ページ16

「記憶が…飛ぶ………?」

 喜雨が驚いた様にその言葉を繰り返した。

 「あぁ……そういや、お前たちには

  見覚えがあるな……確か―――」

 喜雨のその顔を見て思い出した様に

 規那は言った。

 「―――交差点で」

 その瞬間、喜雨や多雨はもちろん、

 木綿と僕の時が止まった。

 しかし、この話には合点がいく。

 規那は正真正銘の"神"で、人間界では

 都合が良い"子供"の姿をしている点も、

 合致している。

 これは、あの話の"神"は本当に規那だと

 言って良いだろう。

 僕らが固まっているその時、ただ一人

 言葉を発した者がいた。

 「………運命は…動き出した」

 ―――所縁だ。

 所縁は鋭い瞳をしているが、

 どこか苦しみや哀しみが感じられる。

 そして、淡々と開き直った様に規那は言う。

 「運命…?ああ、所縁はそういう系の能力か。

  しかし、俺はあの時捻じ曲げてしまった

  からな……その、運命とやらを」

 きっと、喜雨と多雨を生き返らせた時の事を

 言っているのだろう。

 所縁は規那を見た。

 「―――だから、お前の言う悲しい運命は

  俺が覆せるだろ?」

 所縁の瞳に希望の光が見えた。

 「し、しかし……っ!」

 「抗うか……じゃあ、喜雨、多雨…お前たちは

  俺に蘇らせられたこと、嫌だったのか?

  あの死は本意では無かっただろ?」

 規那は真剣な表情を喜雨と多雨に向ける。

 喜雨と多雨は一度だけ顔を見合わせた。

 「いいえ。今あるこの命、4年前に

  あのまま失っていたらきっと、

  私は未練で現世を彷徨っていたかも……」

 「俺も喜雨と同意見だ。

  俺は今もあの瞬間を後悔しているが、

  だからこそ、生き返れた事を

  最後のチャンスだと思ってる」

 2人の言葉に、所縁は言葉を発することが

 出来なかった。

 ただ、静かに、所縁は泣いた。

 「所縁、お前のその"恐れ"……

  正しく使えば危機を察知する事に

  長けていると、言えるだろうな。

  しかし、今のままでは行動力に欠ける。

  だから―――」

 所縁はその場に踞っていた。

 その姿は誰も見たことは無かった。

 そして、規那が施した"それ"によって

 所縁は深い眠りへと落ちた。



 「―――それで、規那はエクライデアルに

  入るのかい?」

 「―――良いだろう、力になる。

  ま、どうせ帰れないのだからな」

 そして、規那は仲間になった。

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作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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作者名:雨音 時雨 | 作成日時:2021年5月17日 23時

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