君はお姫様 ページ32
「何をなさっているのですか？」
「これが何か分かるか」
アレクシスが中から取り出したのはゲーム機であった。それも全部男が好みそうなものばかりでありこの館にはないものだった。
「何ですか？」
「ゲームさ。レースするゲームでなァ。しようぜ〜、俺と」
「そんなの、わかりません！それに…アレクが有利なんじゃないですか」
「何もいきなり勝負しようぜなんて言わないさ。教えてやる」
都姫は元より何かに突出した天才ではあるものの全てにおいて人並み以上の非凡さは兼ね備えている。
アレクシスの説明も簡潔ではあったが都姫はすぐにゲームに夢中になり覚えた。
こんなに楽しいものも存在するのか、それも2人ですると楽しい。そう思いながらいつのまにか都姫の表情は明るくなっていく。
レースのステージは海や山や街中や様々で外の世界が垣間見えるうえドライブをしている気分にもなった。
「おめー、めちゃくちゃ強いなァ」
「ふふ。手加減して下さってます？」
「いんや、全く。うおっ。また負けた！」
都姫は口元に手を添え軽やかに笑った。
それをアレクシスは暗殺者とは思えないほどの穏やかな表情で見つめた。
それからどのくらい時間が経ったか。
男子が好むような遊びばかりだが色んなことをして2人は楽しんだ。
たまに館を巡回している警備員が不審がってこちらの様子を見に来たが2人は植物の影に身を潜め回避しては笑い合った。
明るいアレクシスの隣にいると都姫もいつの間にやら笑顔が絶えなくなっていた。
この時間が続けばいいとさえ感じるが時は残酷でもう太陽は沈みかけている。
「そろそろ、帰らねえとなァ」
分かってはいたものの彼のセリフに都姫はズキンと胸が痛んだ。
「フランスに俺の別荘がある。別荘っつってもよォ、アパートみてえに小さくて昔俺が住んでたところだがよォ」
夕陽に照らされ逆光のせいかアレクシスの表情がよく見えない。
「そこにおめーとおめーの好きなやつらを連れて行くってのはどうだ」
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作者名：塩味 | 作成日時：2019年1月27日 19時
