三十九香 ページ42
だが、神は気分を変えたのか少女に再び生きる希望を与えてきたのだ。
突然と家を訪れてきた男性と幼女。
少女はこの男性を視ると何か違和感を覚えた。
何処か懐かしい、近しい雰囲気を。
その考えは正しかった。
男性は少女の母の兄だと云う。
それに加え男性は少女を養うとまで云ってきたのだ。
少女は少し考えた。
また、大切な人を無くすのではないか。
だが彼は私の唯一の親族、血縁関係に当たる人物。
母の実の兄だ。
少女は了承を下した。
その男性の養子となることを。
少女は再び一人ではなくなった。
一人が嫌いではなくなっていった。
『…だから、私は幸せ者なんです。
そんな貴方のような暗い過去を持っている訳でもない。
"普通の女の子"なんですよ。』
話し終ると同時に太宰さんを見ると、凄く複雑な顔をしていた。
むず痒いような、そんな顔。
そして何かを絞り出した様に口を開いた。
「……普通、じゃないでしょ。」
普通じゃない?
そんな事はない。
確かに私は学校を中退したし、生まれてから犯罪組織と隣り合わせで生きてきたけど。
世間から批難の目を向けられて来たけれど。
でも、私は___
「君は普通なんかじゃない。
特別なんだよ。それは悪い事じゃない。自分に自信を持ってみて?君には、君にしか出来ないことだってあるはずなんだよ。」
『わ、私は、…………』
「君はね、私にとって大切な人なんだ。
だから、君は特別なの。」
ニッコリと口元に弧を描く彼は私を引き寄せて強く抱き締めた。
優しいフェロモンが私と彼を包む。
甘い香り、柔らかい絹の様な心地。
初めて知ったこの感覚。
これは多分、人が大切に想っている時に相手を包み込む為のフェロモンなんだろう。
犯罪組織だからなんだ?
犯罪者の娘だからなんだ?
マフィアの幹部だからなんだ?
人の命の価値、権利はその人の立場とはなんら関係ないのである。
私も、彼も。
両親も組織の皆も、ポートマフィアの皆も。
此処の人は私の大切なものを奪ったかもしれない。
伯父様は必死になって謝ってきた。
けれどそれは赦されることではなくとも、赦せるのだ。
私が赦すと一言云えば済むのだ。
私たちがいるのはそんな世界。
誰の不幸をも望まない。
人の過ちに対して赦しをあげられる。
だから私は誰にも怒ってなんかいない。
だって私、幸せだから。
『幸せです、太宰さん。』
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ゆら(プロフ) - 棒緑カエル軍曹ってあれですよね!?あれ私も大好きです!! (2023年2月16日 20時) (レス) @page45 id: 9fa1b4957f (このIDを非表示/違反報告)
博識のうさぎ(仮)(プロフ) - イージストさん» ご意見ありがとうございます。えと、少し考えてみます笑私もこの作品が好きなのでそう言うような形で続けられれば嬉しいですし。 (2019年2月27日 16時) (レス) id: 311cf89819 (このIDを非表示/違反報告)
イージスト(プロフ) - これの中也バージョン見たいかも (2019年2月27日 15時) (レス) id: d35fbbbafd (このIDを非表示/違反報告)
ゆちよきし(プロフ) - 博識のうさぎ(仮)さん» これからも、様々な小説で陰ながらこっそりと拝見させて、応援させて頂きます! (2018年12月10日 22時) (レス) id: 09928c8e9d (このIDを非表示/違反報告)
博識のうさぎ(仮)(プロフ) - サキさん» ありがとうございます!更新頑張ります!こちらこそここまで読んでくださりありがとうございました! (2018年12月10日 20時) (レス) id: e5b267ef9c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:博識のうさぎ(仮) | 作者ホームページ:
作成日時:2018年8月14日 9時