もう逃げないでII 4【爆豪勝己】 (ページ24)

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#169 大人編ページ24

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突然、どこからか聞こえてきた声に緑谷は困惑した

勢いよく辺りを見渡すが、周りに人の気配はない

「君は誰だ！？」

「ヒーローさんはここからの景色が好きなのね」

問いかけても答える気はなく、どこにいるかまで分からない

わかるのは、緑谷に話しかけている声がするということだけだ

仕方なく、彼はその声に応えて見ることにした

「……この街を見渡せる場所ですから。あなたもお好きなんですか？」

「ええ。君と全く同じ理由でね」

相手の質問に回答してやっと、答えが返ってきた

「君、忙しそうだものね」

「暇だと嬉しいんだけどなぁ」

「あら、そうなの？」

「ヒーローにとって、暇になること以上に良いことはないですから」

緑谷は、現在一緒に活動しているヒーローを思い浮かべ、そう答えた

再度周りを見渡しても、やはり人の気配はない

“もしかしたら葉隠さんと同じように透明になれる個性なのかもしれない”

そう思い、声のことを探ろうとした

その時だった

急に横に気配を感じ、緑谷はゆっくりと顔を動かした

そこには声の主である“彼女”がいて、

彼女は、屋上のギリギリに立って景色を眺めていた

そしてゆっくりと彼女が振り向き、こう口にした

「その考え方、やっぱりとっても素敵だわ」

と。

彼女の声、話し方、後ろ姿

全てに既視感を覚えていた緑谷は、振り向いた彼女を見て、心のどこかで納得した

いくら時間が過ぎようとも

いくら相手が変わろうとも

変わらないところはどこかにあって

例え一緒に過ごした時間が短くとも

それは簡単に失われるものでは無いと

そう、確信したからだ

「Aちゃん、ここにいたんだね」

彼女は微笑み、彼に応えた

『久しぶりね、デクくん』

＊