# 45 ページ47
「分隊長補佐、ですか…？なぜ私に」
まだ入団してすぐの新兵なのに。
もっと適任は居るはずだ。
しかし、碧眼が揺るぐことはなかった。
「分隊長補佐というのは、経験があれば良いものでは無い。君のような、洞察力のある人材が必要だ」
団長の首元に光るループタイの、綺麗なエメラルド色にうっすら映る自分を見た。
「それに、君は前回、初陣で奇行種を討伐している。実力としても申し分ない」
「あれはきっと、」
「偶然…か？」
「っそうです」
やがて、団長の碧眼が、彼の薄いまぶたに覆われて見えなくなる。
「…嫌か、分隊長補佐は。」
膝の上の手をぎゅっと握った。
リヴァイが巻いてくれた包帯が、少しだけ緩んだ。
「怖いか、仲間を失うのが」
団長の声に、思わず俯いてしまった。
視界がぼやける。言うまでもなく、涙のせいだった。
「仲間の死を見届けるのは、辛いか。」
「今までに死んで行った兵士たちは、それで終いか？」
団長の言葉に、思わずはっとなり顔を上げる。
その拍子に、右目から1粒の涙が頬を伝っていったのがわかった。
「幾千もの命は無駄死にか？理由もなく死んだのか？」
イザベル、ファーラン。あの男性兵。モーゼスさん。
『人類の反撃の糧に』
『何かを遺して行かなきゃ』
『俺の分まで…』
途端に、あの言葉達が、私の脳裏を隙間風のように吹いていった。
「あの者たちに意味を与えるのは、我々だけだ。違うか？」
今度は、碧眼は真っ直ぐ私を見据えていた。
両目に溜まった涙が、とうとう堪えきれなくなって流れ出した。
右手の傷口の上から、爪が包帯越しに触れるのを感じた。
「やります。やらせてください、分隊長補佐。」
握り過ぎた拳に爪が突き刺さる感覚がした。
今度は左手だった。
ああ、またリヴァイに怒られちゃう。
なんとなく場違いなことを考えていると、団長はまた碧眼を隠した。
「ありがとう。」
団長の、隈が出来た目元が緩むのを感じた。
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作者名：来世は春菊 | 作成日時：2023年11月25日 23時
