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馬を引連れてシガンシナ区を抜け、本部へと向かう。
その道中ではずっと、団長の声が木霊していた。
『何の成果も…得られませんでした！』
あれ以降、団長の表情はずっと暗いままだった。
思わず俯いていると、隣に人の気配を感じて右をみる。
リヴァイがいた。
「…奇行種を一体、やったらしいな」
「うん…。」
リヴァイの声は、落ち着いていた。
「よくやった」
リヴァイは私の頭をぽんと撫でる。
なんとなく、全てが救われたような気がして、視界が滲む。
「…おい、ちょっと我慢しろ。兵舎に着くまではな」
辺りを見回しながら私にそっとフードを被せるリヴァイの手の温もりに、生きていると実感する。
「…仕方ねぇ…。おいお前、馬を頼む」
リヴァイは自分の馬と私の馬を後ろにいた兵に任せると、私の手を引き隊列から外れる。
やがて人気の少ない路地裏にたどり着いた。
リヴァイは私と並んで花壇に腰掛ける。
リヴァイの匂いと温もりに包まれる。
落ち着く匂いに、溜まっていた涙が堰を切ったように溢れ出した。
「…ここなら人も来ねえだろ。泣け」
リヴァイの手が、優しく私の背を撫でる。
「…これしかなくてすまねぇが…。飲め」
腰元から取り出した水筒の蓋を開け、私の口元に宛てがう。
「ん…」
喉が潤う感覚に、身震いをした。
「…ひでぇツラだな…」
私の涙を人差し指で掬い、ぐちゃぐちゃになっているであろう顔をハンカチで拭う。
「…きたないよ」
潔癖でしょ？
そう問いかけるように見ると、リヴァイは一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに、ふっと笑った。
「絞り出して出てきたンがそれか。別に、汚くねぇ」
リヴァイの黒い瞳に、吸い込まれるように魅入る。
「なんだ」
あまり見つめすぎたからか、眉間に皺を寄せたリヴァイが怪訝そうな顔をした。
「…んふふ。皺、取れなくなっちゃうよ」
なんだか面白くて、リヴァイの眉間を人差し指でなぞる。
「そんな難しい顔してると、女の子にモテないよ」
「余計なお世話だ」
リヴァイに頬を抓られ、あまりの痛さに顔を歪めた。
「…もう行けるか」
「うん。ありがとう」
リヴァイは私の手を取り立たせると、路地を抜けて門へと向かう。
人通りの少ない道を通ったのは、リヴァイなりの気遣いだ。
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作者名：来世は春菊 | 作成日時：2023年11月25日 23時
