いつか、絶対に。【進撃の巨人】 (ページ36)

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本格的に雨が降りはじめ、視界が遮られた。

　泥濘の中を馬が踏みつけていく。

　前の馬の足で泥が跳ねて、頬に着いた。

　
　前を睨みつけるように進んでいると、奥の方に大きな影がひとつみえる。
　

　「総員、戦闘用意！」

　団長の声が響き、兵が一斉に速度をあげる。

　「目標は一体だ！必ず仕留め、ここを我々人類の最初の壁外拠点とする！」

　背筋がぴしっとのび、ブレードを引き抜く。

　少しだけ開けた場所に出ると、巨人が姿を表した。

　
　少し大きな木の幹の根元から、二手に別れる。

　1週間ほど前の訓練を思い出す。

　私は、ミケ分隊長と同じく攻撃班だ。

　「訓練通り5つに別れろ！囮は我々が引き受ける！」

　団長が少しだけ振り返るのが見えた。

　その声に応じるように、兵たちが一斉に巨人の前を大きく旋回していくのが見える。

　そして、巨人が囮の兵達に手を伸ばしている。

　鼓動が高まるのをかんじる。

　大丈夫、私なら、やれる。

　さっきだって、奇行種を一体倒せたんだから。

　自分に鞭を打つつもりで馬から腰を浮かせ、木の幹目掛けてアンカーを刺す。

　前にいたユレイナさんの後を追うように、木々の合間を縫いながら旋回する。

　「全方向から同時に叩くぞ！」

　引き締まったエルヴィン分隊長の声を聞いて、巨人の右足首、人間で言うアキレス腱あたりに照準を定める。

　「人類の力を…思い知れ…！！」

　上の方で、巨人の項を狙った先輩兵が叫び、回転しながら切りかかるのが見えた。

　私とユレイナさんは目を合わせて頷き、ユレイナさんは左足首に、私は右足首に、同時に飛びかかって肉を削ぐ。

　
　足首の肉が中を舞い、巨人はバランスを崩してその場に倒れ込む。

　
　討伐できたかな…？

　そう思い見上げると、巨人の口の中から1本だけ腕が落ちてきた。

　どうやら、項を削ぐのに失敗した先輩が、食べられてしまったらしい。

　
　未だに咆哮を上げながら襲い来る巨人に、1人、とてつもない速さで回転しながら切りかかる兵士が1人。

　
　リヴァイだ。

　短い黒髪が靡き、やがて項の肉を削ぎ取る。

　
　巨人が討伐できたのを確認して、リヴァイは地上に降り立った。

　そのまま無言で飛び散った血を拭う。

　やがて、辺りを見渡していたエルヴィン分隊長も降り立つ。

　
　「周囲にも巨人は見られませんでした。」

　
　「そうか。ならば、拠点となるテントを張るぞ！」

　団長の声に、兵士は馬から降りた。