いつか、絶対に。【進撃の巨人】 (ページ4)

今日:3 hit、昨日:66 hit、合計:22,763 hit

#　3 ページ4

-- 843年 --

　かたん、と、控えめに音を立てながら、最後のお皿を立てかけた。

　今日はお客さんがいつもより少なかった。

　───父が居なくなり、もう7年になる。

　もう7年も経ったと言うのに、父を諦めきれない自分に思わず苦笑してしまった。

　ここで働いていた知り合いも、辞めるか、はたまたどこかへ消えてしまうかの2択であった。

　
　
　今や、この店で働いてるのは、私と、店長の2人だけ。

　
　「A。今日はもう上がっていいよ。」
　

　店の奥で書類に追われていたらしい店長がひょっこりと顔をだした。

　時計に目をやると、いつもより少し遅い時間だった。

　
　「わかりました、おやすみなさい。」

　私の返事を聞いてゆっくりと頷き、おやすみと返してくれた店長の笑顔を店に残して、いつも通りの家路についた。

　…はずだった。

　
　そう遠くは無い距離ではあるが、少しでも早く帰りたい私は、いつも裏路地を通って近道をしていた。

　それが、徒になってしまったのかもしれない。

　路地を曲がったところで、いきなり後ろから押し倒され、地面に強く顔を打つ。

　何が起きているのかを把握する時間すら与えられず、ただただじたばたと無意味な抵抗をするまでであった。

　「お前ら早く抑えろ！」

　
　地下街には、地上への居住権を求めて、貴族からの依頼をこなす人が多い。

　その依頼の内容は様々で、盗みはおろか、ときには殺人も…。さらに、趣味の悪い貴族は女性を求める…

　なんてことは滅多にない話では無いから、出かける時はスカートは履かずに、髪の毛もフードで隠しなさい

　そう言っていた父を思い出した。

　
　今日は、フードを被り忘れていた。

　どことなく他人事のようにさえ感じてきて、薄れゆく意識の中、乾いた笑いを1つ洩らした。