いつか、絶対に。【進撃の巨人】 (ページ29)

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リヴァイの後について歩く。

　何度も道中で話しかけようと思ったが、なんだか重々しいリヴァイの横顔を見て、口を閉じた。

　
　考えるのは、やめよう。

　やがて階段の前に着く。
　リヴァイが私の少し前に立ち、部屋を出てから初めてこちらを振り返った。

　
　「暗いからな。気をつけろ」

　
　差し出された手を握り、1歩1歩確かめるように進む。

　薄暗く足元が見えなくて、何度も躓いた。

　
　やがて1つの扉の前に着くと、リヴァイは慣れた手つきで持っていた鍵を取り出し、開ける。

　ドアを開いたその先には、とても綺麗な星空が広がっていた。

　「わ、すごい」

　「ぼけっとすんな」
　

　美しい景色にハッと息を飲み、呆然としていたが、リヴァイによって遮られる。

　リヴァイは私の手を引き、屋上の少し奥にある段差に腰掛けた。

　「…綺麗か」

　「うん。見たことないよ、こんな星空」

　「リヴァイは、何回か来たことがあるの？」

　リヴァイの横顔を見つめながらそう問いかける。

　「…あぁ。」

　「へぇ、すごい。いいなぁ、私も」

　「なぁ、もう気づいているんだろ」

　私ももっと早く、と言いかけたのをリヴァイが遮った。

　「本当に、嘘をつくのが下手だな。」

　
　リヴァイの、全てを見透かすような視線に射抜かれ、少しの間息をするのさえ忘れていた。

　思わず、着ていたマントをぎゅっと抱きしめる。

　「嫌だよ、嘘だって、言ってよ」

　視界がぼやける。信じたくなかった。
　本当は、薄々気付いていた。

　あの日、連れていかれたのはリヴァイだけじゃなかったこと

　
　ここに来てから、あの二人を一切見かけていないこと

　──このマントから、少しだけ懐かしい匂いがすること

　「リヴァイ、お願い。信じたくない」
　

　我慢できずにぼろぼろと零れる涙を、人差し指で掬うリヴァイの表情は、ぼやけた視界のせいで見えない。

　「イザベルとファーランは」

　まって、お願い。

　その先の言葉を紡がないで、まだ信じたくないの

　「死んだ。奴らに食われてな」

　あぁ、本当は、分かっていたはずなのに。

　ファーランの、懐かしい匂いが、イザベルの、優しい笑顔が私の脳を掠めた。

　
　やがて、リヴァイのぬくもりが私を覆う。

　ほんの少しだけ、紅茶の香りがする。

　私を撫でる手つきは、優しかった。