いつか、絶対に。【進撃の巨人】 (ページ27)

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香ばしいパンの匂いが立ち込める食堂で、お盆を持って空いているお皿を探す。

　あの後、すぐに兵舎に戻り、先輩方は新兵の私よりも先にお風呂へ向かって行った。

　
　『何かを、遺して行かなきゃ』

　そう告げたユレイナさんの声が脳に木霊した。

　私は、他の団員のように、巨人に恨みを持っている訳では無い。ただ、外に出てみたいという欲望の為にここにいる。

　そんな私が、果たして何かを遺して行けるのだろ

　「随分と小難しいツラしやがって。せっかくの食事が台無しになっちまうだろ」

　私の肩をすこし強めに叩いて隣に座ったのは、きっと私よりも難しそうなツラをしているリヴァイだった。

　「うるさいな。私よりよっぽど険しい顔してるよ、リヴァイの方が。」

　「俺は元々こういう顔だ」

　そういうと、少しだけリヴァイがしょげたように見えて、何故か小さく笑みが零れた。

　「順調か、ここでの生活は」

　「うん。先輩方も優しいし、楽しい」

　そうか、と短く返事をしたリヴァイが、シチューを口に運ぶ。

　「リヴァイはもうお風呂上がったの？」

　「あぁ。他の奴らと一緒に風呂に入るのは御免だ」

　リヴァイらしい返答だ。

　

　…

　
　しばらくの沈黙を破ったのは、リヴァイからだった。

　「…おい、風呂上がったあとは暇か」

　もう全て食べ終えたらしいリヴァイが、水を飲みながら問いかけてきた。

　「うん、暇だよ。どうしたの」

　リヴァイは私に目もくれず、足を組んだまま、眉間に皺を寄せる。

　「……俺の部屋に、こい。いいな」

　「え？うん、いいけど」

　やけに難しそうな顔をしているリヴァイに、なんだそれだけか、と思いながら頷く。

　私の返事を聞いたリヴァイは、少しだけ皺を減らして食器を片付けに行った。

　なんだか、変だ。リヴァイの様子が…。

　地下街にいたあの頃よりも、少しだけ逞しくなったように思えるリヴァイの背中を見つめながら、最後のパンを口に入れて、私も席を立つ。

　先輩方がお風呂から上がって食堂に向かってくる声がする。わたしも、はやくお風呂に入らなければ。