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｢分隊長。用意が出来ました｣
兵舎の門の前に停められている馬車に近づき、その前に立っていた女性──恐らく付き添い──に声をかけると、女性は馬車の中の分隊長に声をかける。
すると、分隊長ともう1人、金髪の背の高い男が出てきた。
｢用意がてきたか。では、中に｣
少し手招きをする分隊長について行くと、もう1人の金髪の男がいきなり私の首周りに顔を近づける。
｢うひゃっ？！な、な、なんですかっ？！｣
ぞわっとした独特な感覚に思わず肩を捩るが、その感覚は中々離れない。
｢嗚呼、済まないな。そいつはミケという。彼もまた分隊長だ。｣
い、いや、そこじゃない！！！
すんすんと鼻を鳴らす音が聞こえできたので、おそらく匂いを嗅いでいるのだろうと思う。
今にも逃げ出したい気持ちをぐっと堪えて、まるで猫を前にした鼠のように縮こまっていると、やがて嫌な気配は離れていった。
｢ミケは初対面の相手の匂いを嗅ぐ癖があるんだ。すまないな｣
ど、どういう癖？！
心の中で分隊長にツッコミをいれながらもミケ分隊長を見ると、なんとなく複雑そうな顔をしていた。
もしかして臭かった…？と思い、自分の服の袖を嗅いでみるが、やはり良くわからない。
｢ミケ。セルビター。｣
少し低めなエルヴィン分隊長の声に、私とミケ分隊長ははっとして、急いで馬車に乗り込む。
エルヴィン分隊長とミケ分隊長に挟まれて、なんだか複雑な気分だった。
…
馬車の中に沈黙が訪れる。
気まずい…。
目のやり場に困って、じっと膝の上の手のひらを見つめていると、エルヴィン分隊長が話しかけてくれた。
｢セルビター。｣
｢は、はいっ！｣
思ったよりも近くで聞こえた声にビックリして肩を揺らしてしまう。
なんでしょう？と左を向くが、エルヴィン分隊長は真正面を見据えていた。
頭の上にはてなを浮かべていると、ゆっくりとこちらを向いた碧眼と、ぱちりと目が合う。
まるで吸い込まれてしまいそうな美しい水色に見とれていると、エルヴィン分隊長はまた前をむいた。
｢…ミケと仲良くしてやってくれ｣
神妙な面持ちで意外な事をいうエルヴィン分隊長に、思わず顔を顰める。
ミケ分隊長と…？
少し戸惑いながらもミケ分隊長の方を見ると、一瞬だけ目が合って逸らされた。
な、なぜ…？！
調査兵団、わからない。
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作者名：来世は春菊 | 作成日時：2023年11月25日 23時
