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向かいにエルヴィン分隊長、そして右には教官という、異例の組み合わせに思わず身震いをする。
｢こんにちは。私は調査兵団の分隊長を務めている、エルヴィン・スミスだ。｣
｢第98期 訓練兵団の A・セルビターです。｣
どことなく堅く、冷淡な彼のトーンに、とくんと心臓の鼓動が絶えず木霊する。
｢それで、ご用件というのは…？｣
恐る恐る尋ねると、意外な返事が来た。
｢単刀直入に言うと、君に今から調査兵団に入団してもらいたいと思う。｣
碧眼に捉えられ、金縛りにでも会ったかのように身動きが取れなくなる。
分隊長の言葉を必死に噛み砕いて咀嚼する頃には、分隊長はティーカップに口をつけていた。
｢…どういうことでしょう？｣
まだ訓練過程は2年以上残っているのに…？
訳も分からず教官と分隊長に交互に目をやる私とは打って変わって、眉ひとつ動かさい分隊長と教官。
｢そのままの意味だ。君には素質がある、是非とも今すぐ入団をしてもらいたい。｣
分隊長は、もう一度、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
｢勿論、座学の分野でまだ習っていないものに関しては我々が手配をしよう。｣
落ち着き払った口調でそう述べる分隊長に、なんと返せば良いのか分からなかった。
｢突然のことだから、驚くのも無理は無い。しかし、我々には時間が無い。今、この場で決めてもらいたい｣
分隊長の瞳は、私を捉えていなかった。
｢拒否をしたら…どうなりますか？｣
震える声で尋ねる。
分隊長は、またもや表情を変えずに答える。
｢君はここに来る前に地下街にいた。そうだね？｣
予想外の返答に思わず肩が揺れるが、小さく頷く。
｢そして地下街を出るため、フィリビンを脅して移住権を得た…。そうだね？｣
… ？
私が、フィリビンを、脅した…？？
ついていけない分隊長は、私を置いて口を開く。
｢地下街の10号階段を占拠しているフィリビンから、A・セルビターに脅され移住権を渡したと報告が入っている。｣
は、嵌められた…！と、直感的に思った。
フィリビンが時折移住権を渡したり、取り上げたりするのは、脅迫の罪をでっち上げることで兵団に突き出し、お金を得るためだったのだ…！！
｢それに、君はよく盗みを働いていたと聞く。いくら地下街で生き抜くためとはいえ、地上では通用しない｣
｢もしも入団を拒否するのであれば、それ相応の処置を下そう｣
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作者名：来世は春菊 | 作成日時：2023年11月25日 23時
