五条さん家のお兄ちゃん！ 続編【呪術廻戦】

51. ページ10

悪い予感。俺の、どこか本能に近い部分がはっきりとそれを告げている。


俺は俺の勘を何よりも信じているし、昔からその勘は良くも悪くも当たってきた。だから今回だって当然、心のざわめきに素直に従って腰を上げた。


Aがどっちへ行ったのか分からないので、闇雲に足を進めると、さっきの変な感じが強くなるように思えた。そしてその悪い予感が、誰かの呪力によるものだと気がつく。


最初は、父親とその護衛係のやつ(名前は忘れた)が近くにいるんだと思った。護衛係の攻撃的な呪力が、俺に悪い予感として伝わってきたんだろうと。それは明らかな敵意だった。


なぜ護衛係が戦闘態勢なのか。
その時の俺は、浅はかにもそこにまで考えが至っていなかった。ただ、父親の敵でもきたのか、面白そうだな、としか思えなかったのだ。


段々その2人に近付くにつれて、もう1つの呪力を感じられた。遠くからだと分からないほど、父親に似た呪力だった。


術式が遺伝するのと同じように、呪力が遺伝したり、人によっては似た呪力を持つこともある。呪力の波というか、形というか。そういうものが似るのだ。
しかし、実際に効果を視認できる術式とは変わって、個人の違いがはっきりしている訳でもない、呪力の微小な違い感じ取れる人は少ないだろう。目に見えて分かりやすい部類では無いのだ。


そう、目に見えてないから。


目に見えないから違いがわからない。はっきりとした違いがないから感じ取れない。そんな雑魚たちの言い訳をひっくり返す存在が、俺だ。俺からしてみれば、この2つの呪力を見分けるのも訳なかった。


ただ、この呪力が誰のものなのかは分からなかった。俺の知り合いでは感じたことの無い呪力だ。父親に似ているが、他人の空似だろうか。もしくは父親の親族かなにかで、俺が忘れているだけなのかも知れない。


とにかく、突然に現れた悪い予感、即ち呪力を追って来たのだ。行ってみる価値はあるだろう。


俺は、この時この選択をして良かったと、今でも心の底から思っている。

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