五条さん家のお兄ちゃん！ 続編【呪術廻戦】

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俺はイラついていた。


定期的に鳴る電子音が、文字の羅列に挟まって脳に流れ込んでくる。
それが、面白そうだから呼んだのに全く本性を見せない彼奴への怒りを増幅させた。


葬儀場で彼奴を見つけたあと、彼奴をこの家に連れ込んだ。彼奴は俺の家の奴らとは仲が悪そうだったから、バレずに決行するのが難しいと思われたが、そこら辺は俺のわがままでどうとでもなった。


ただ、問題はその後だ。


彼奴は全く本性を見せないのだ。


連れ込んできて、まず最初に詰め寄った。
なのに彼奴は、俺の目を見ることもなく、｢知りません、分かりません｣の繰り返し。


だから次は、辛いものでも食べさせて意識を逸らそうとした。集中が途切れれば術式も解けて、彼奴の呪いが丸見えになると思ったからだ。


俺が知らない何かがあるなんて、嫌だった。


だが、会食の料理に手をつけなかった奴が、俺がわざわざ持ってきた料理に目を向けるわけがなかった。


その後も擽りだったり嫌がらせだったりを施行したが、まったくの意味を持たなかった。
俺も俺で暇ではないし、時々呼ばれて席を外すことはあったが、それでも彼奴はしぶとく、隙を見せない。


結局俺の方が先に音を上げてしまい、今は彼奴を疲れさせる為に放置しているのだ。


それにしたって、さっきから電話の音がうるさい。


当の本人は気付いておらず、帰りたいという邪念を追い払うのに必死だと顔に書いてある。
それでもまだ耐えようとしているのが馬鹿馬鹿しくて、滑稽で惨めで腹立たしかった。


｢出れば｣


書物を読む邪魔になるし、苛立っていた俺は下を向いたまま冷たく言い放った。


｢さっきからうるさいし、さっさと出れば｣


水面に水滴が落ちるように、静かな部屋に俺の声が響いて、やがて消えた。


次に顔を上げた時、目の前には誰もいなかった。
随分と静かにAは出ていった。俺が気づかないほどに。


無礼を働かないように怯えてやって来る雑魚の方がまだうるさいな、と思ったその時、ぶるりと背筋が震えて悪寒が走った。心が変に蠢いて、目に見えぬ靄が身体にねっとりとまとわりつくような。


悪い予感がしたのだ。

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