五条さん家のお兄ちゃん！ 続編【呪術廻戦】

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思わず崩れ落ちた膝の痛みなんて、心底どうでも良かった。


｢そう、だったんですね…｣


一連の事件による混乱が落ち着いたあと、クラスメイトだった彼の荷物をまとめる為に、彼の部屋に入って、気付いたらへたりこんでいた。


部屋の中心に置かれていたのは、たった3箱の段ボール。
それぞれに、
『お好きにどうぞ』
『お好きにどうぞ』
『処分してください』
と、彼の字で記されていた。


試しに、1番上の『お好きにどうぞ』の段ボールを開けると、そこには彼と一緒に見た映画のDVDが入っていた。


｢貴方だって、たった3箱分しかないじゃないですか｣


その3箱分が、彼のこの世への未練を表しているようで、無性に腹が立った。


この部屋には段ボールの他に、小さな金魚鉢がぽつんと残されていた。そこには金魚が1匹、力尽きて浮いていた。


それ以外はもう、彼がいた痕跡は全て片付けられていた。


なにに対しても苛ついた。
彼が予め死ぬ準備をしていたことも、持ち主など初めからいなかったような顔をするこの部屋も、彼の匂いが残るこの空気も、彼と共に逝ってしまった金魚も、全部、全部、全部。


違う。そうだけど、違う。本当は、自分に1番怒っている。分かっていたのに、分かってあげられなかった。


胸が、きりきりと痛んで仕方がない。はち切れそうなのに、穴が空いているみたいに虚しい。


───


彼と一緒に見た映画を、もう一度見直そうと思った。
結末なんて分かっている。映画の内容自体に、さほど興味はない。


それでも。


テレビをつけた。DVDの用意をしている間、アナウンサーがニュースを告げていた。無意識に脳が反芻する。マンションの一室で、焼死体が二体、部屋は焼けていない、遺体の性別は不明、この一室で生活していた夫婦だとみて警察は捜査をすすめている、この夫婦の息子二人は寮生活により自宅に不在、いずれも連絡が取れていない、なにか事件性があるかもしれない…


リモコンを操作してDVDをつけた。オープニングの明るい音に、暗い文字の羅列はかき消された。


悲しみを自覚せぬよう、ただ、食い入るように画面を見つめた。

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