67. ページ27
───
トイレから帰ってきた時の不穏な空気は容易に感じ取れた。だが、なにも言えないでいた。二人は普通を装っているし、何より、クラスメイトの思い詰めたような雰囲気が聞いてはならないと訴えていたからだ。
でも、むすっとした悟の表情はもう一度屋台を練り歩き始めた時には既に消え、クラスメイトの張り詰めた佇まいも、夜の暗がりを食うお祭りの熱気に緩和されたようだった。
闇も深まり、人の波の勢いが増してきた頃。
「お、あれは…」
波から外れた少し寂しいところに、ぽつんと灯りをともしながら、それはあった。
「ん?あぁ。金魚すくいだね」
「金魚すくい?」
「なんだそれ」
「あれ、もしかして二人ともやった事ない?ポイっていう薄い紙が張ってある道具で、紙が破れないように金魚をすくうんだけど…
一回やってみた方が早い」
足早に歩き出した彼について行くように、俺たちも歩みを進める。
「おじさん!三回分ね〜」
そう言って彼は、虫眼鏡の形をした、俗に言うポイと代金を交換した。足元では、背の低い水槽の中で小さな身体の金魚が窮屈そうに泳いでいる。
「じゃ、まずは僕からね。この紙が破けないように、慎重に…」
ゆっくり手順を説明しながら、彼は易々と金魚をすくい、あっという間に彼のお椀には三匹の金魚が収められる。
他の金魚よりも一回り大きい、黒いのに挑戦して、彼のポイは破けてしまった。
「あぁ〜」
誰からともなく、そう漏らした。
「まあ、こんな感じだよ。次はA、いってみよー!」
「はい!」
意気揚々と受け取った赤いポイは、一匹の金魚もすくいあげること無くその役目を終えた。それは悟も同様だった。
「…おじさん、この金魚、三袋に分けてもらえる?」
1496人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
砂漠 - エレナさん» ありがとうございます!そう言って頂けるととても励みになります(●︎´▽︎`●︎)これからも楽しみに思っていただけるよう頑張るので、ぜひ最後までお付き合いください、、、(_ _*)) (2022年4月2日 11時) (レス) id: c817577711 (このIDを非表示/違反報告)
エレナ(プロフ) - この作品大好きです!続きが楽しみです! (2022年3月26日 21時) (レス) @page16 id: 806542db6b (このIDを非表示/違反報告)
砂漠 - お餅さん» まーたやりました。今日何回目ですか、私!!1個下のコメントはお餅さんへの返信です、、、失礼しました、、、お餅さん、コメントありがとうございました✨ (2022年1月1日 15時) (レス) id: c817577711 (このIDを非表示/違反報告)
砂漠 - コメントありがとうございます!ご期待に添えるよう、更新も頑張っていきたいと思います٩(ˊᗜˋ*)و最後までお兄ちゃんを応援してあげてください(_ _*)) (2022年1月1日 15時) (レス) id: c817577711 (このIDを非表示/違反報告)
砂漠 - あいすくりぃむとちょこれぃとさん» いや、私もタイトルとの温度差は感じていたんですよね、、、ですが地獄を見たというお言葉に笑ってしまいました😆最高の褒め言葉ありがとうございます!お兄ちゃんには幸せになって欲しいですね、、、頑張ります🔥 (2022年1月1日 15時) (レス) id: c817577711 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:砂漠 | 作成日時:2021年12月11日 11時