同居人は有名人 5 ≪ﾆﾉﾐﾔｶｽﾞﾅﾘ≫ (ページ11)

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回想5 ページ11

少し、泣きそうになる。

でも、泣いちゃダメ。

泣いたら、だめなんだ。

ぐっと拳に力をいれて。

和から目をそらさないで。

口を開く。

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回想

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それは、バレンタイン。

もう、先輩に告白してしまおうかと思ってた。

手作りのチョコに、メッセージカードを添えて。

カバンにいれて、公園に向かう。

いつもは私が先につくのに、その日は先に先輩がいて。

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遠くからでもわかる。

なにかあったんだ。

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先輩の所に走る。

ベンチに座っている先輩の前にたって。

『何かあったんですか？』

先輩が、顔をあげた。

どくん。

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泣いてる。

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先輩…？

そっと、先輩の肩に手を置く。

目が合った。

『大丈夫ですか？』

先『あ、うん。ごめん。』

涙をぬぐって、力のない笑顔をむけてくれる。

先輩の肩から、手を離せない。

先『ちょっと、彼女とケンカして。』

また、顔から笑顔が消える。

原因なんてわからない。

でも、先輩には笑っていて欲しい。

純粋に、元気つけたかった。

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でも、今ならあなたが手に入るとどこかで思った。

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『なぐさめてあげましょうか？』

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馬鹿なことを言った。

言ってから思う。

でも、もうひけない。
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先輩の肩から手を離して。

先輩の前にかがんで。

先輩を覗き込みながら、

そっと、先輩の手をにぎった。

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先『…A』

先輩の目が揺れた。

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どくん。

どくん。

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私はうなずいて、また泣きそうな顔をした先輩を抱きしめた。

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『私が卑怯だったの。弱った所につけこんで、先輩を手に入れようとした。卑怯だから…だから見ないようにしてた。先輩の気持ちなんて。でも…やっぱりわかってしまうから…』

やっぱり泣きそうになる自分を、こらえきれなくて。

涙がこぼれた。