【実況者】短編集2

uszw ページ4

「あのー、佐々木さーん」


牛沢「あぁ、はいはいすんません」



Aに声をかけられて俺は慌てて立ち上がり

電車に乗り込んだ



「どしたん？お疲れ何ですか？」


牛沢「いや、別にそんなんじゃなくてさ」




VR体験を動画で紹介するために
招待されたらしいAは

俺を誘い、こうして一緒に電車に揺られている


電車の外の景色を見ていると
建物は少しずつ減り、緑が増えていく

次第に景色は見慣れぬものになっていき
小さなトンネルを抜けた後、

大きな海が広がった




「……海だ」



久々の遠出だ
来たのは江ノ島の駅


牛沢「俺カメラしか持ってねぇけど…

本当に大丈夫なのか？」



「大丈夫大丈夫、お金ならあっち持ちだし

私はカメラすら持ってない！」



牛沢「はぁ？

機材俺に持ってこさせたのかよ！」


俺がそういうとAは
「ま、いいじゃ〜ん」と楽しそうに笑った


風が吹き彼女は邪魔そうに髪を押さえた
少し、潮の臭いがする

タダでここまで来れるっていうんだから
まぁいいか



関係者のネームプレートをかけられ
綺麗な服を着た女性に案内される


「はい、カメラ貸して」


俺ははてなマークを浮かべながら
彼女にカメラを手渡しする



牛沢「……っえ、Aが撮んの！？」


「え？そうだよ？

何も持ってないさっきいったじゃん

帽子もマスクも持ってないもの」






牛沢「はい、ということでVR体験に来ました！」


「おぉ〜〜！」


牛沢「カメラ役でAもいます」


「いまーす」


そういってカメラの前にひらひらと手を振る





牛沢「こっわこっわこっわ！！」



高いビルから飛び出た鉄骨とその先に猫
その画面の左下ワイプで

へっぴり腰の俺

Aは





ゲーム画面のみならば、とやってみたAも

その声と画面だけでその焦り様がわかる




大騒ぎしながらの撮影は三、四時間程かかり

ようやく終わった

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