成り代わり杵の突撃！隣のブラック！ (ページ9)

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CASE1-8 ページ9

"打ち直しする"
「結界は大丈夫？」
"大丈夫"
「何かあったら私も攻撃する」

そう言うと、妖精さんは顔色を変えてぶんぶんと首を振る。
二頭身の身体で首を振ると落ちてしまいそうで、少し驚いた。

"だめ、祟り神に攻撃するとあなたまで堕ちちゃう"
「え、そうなの？本体じゃない武器でも？」
"本体じゃないならまだましだけど、絶対に本体に触れさせちゃだめ"
「へえ、面倒だな」

妖精さんはそう打つと、刀の破片を集めて炉に入れ始めた。
これから打ち直していくのだろう。

打ち直す間は暇なので、端末でもいじっておこうか。
そう思って色々といじる。

しばらく経って、カンカンという音が響かなくなった頃、目の前には何本かの刀。
どれもがキラキラと光を反射して輝きを放っている。

"この子が今剣、この子が同田貫正国、この子がにっかり青江"
「短刀打刀脇差が一本ずつか」

近くにあった同田貫正国を取る。

「…？」

じわり、と脳の奥から湧き上がってくる何かがある。
これはなんだろうか。
そのままじっくりと同田貫正国を眺めていると、不意に記憶が流れてきた。

「この同田貫は二本目だった。一本目が少し前に折れて、阿津賀志山で折れないようによく配慮してた。両方とも戦好きで話があって、よく一緒に出陣してた。でも重傷の短刀を庇おうとして重傷になる優しいやつでもあった」

「この今剣は何本目かは分からない。岩融が折れた、と泣いていたのをよく覚えてる。三条大橋によく駆り出されて、練度がカンスト手前だった」

「このにっかり青江は三本目だった。変な喋り方をする奴だったけど、二本目は何だかんだ他の奴を庇って折れたのを見て良い奴だと思った。三本目も良いやつだった」

これは、御手杵の記憶だろうか。
すらすらと口をついて出たのはこの刀たちの記憶。
本丸での様々な記憶がどこか薄皮一枚先で上映されている。
私は御手杵ではないのだから、こんなものを見せられても対応に困る。

"悲しい？"

と書き込まれた端末を見て答える。

「まあ、悲しい…のかな？」

悲しいかと言われると分からない。
どちらかというと悲劇的映画を見て登場人物に同情する気持ちだ。

でもまあ、刀を適当に折るのはさすがに私の前の"御手杵"が許さなさそうだし、丁寧に扱おう。

後書き
刃選は特に何も考えてないです。