CASE1-6 ページ7
「…私一人？他に生き残りはいないの？」
いない、と端末に打ち込まれる。
「呻き声とか聞こえたんだけど、あれは？」
"その声は、あなたを呼んでいる声"
"穢れに取り込まれて、祟り神の一部と化した刀剣たちが、無意識化の内に浄化されようとして、神格を持つものを呼んでいる"
「刀剣男士達が、祟り神に？」
"そう。神格も落ちてしまって、戻ることは不可能"
"ここは私が張った結界内だから聴こえてはいないけど、今も御手杵、御手杵って呼んでいるはず"
「そりゃあまた」
"でもあなたは御手杵じゃないから、無事で済んでるみたい"
ぱちり、と目を瞬かせる。
「…分かるの？」
"魂の形が、歪"
"人間のと、混ざってる？"
「…そうだね、私は御手杵じゃないよ」
"良かった"
そう打つと、ぴょんぴょんと喜びを表すように飛び跳ねる。
中々かわいらしい。
"ここからは、逃げた方が良い"
「それは私もそうしたいよ。でも転移ゲートが動かないんだって」
"なんと"
しゅんと眉を下げて悲しげな顔になる妖精さん。
"多分、祟り神の影響で本丸が正常に作動していないから"
"この本丸はずっと厚樫山に出陣してたから、そこなら繋がるとおもう"
「そうなんだ。…妖精さんは逃げないの？」
"この結界も、もう長くは保たない"
"私は本丸と一心同体。この本丸はもうすぐ終わりを迎えようとしている"
"本丸が消えたら私も消える。それならせめてこの本丸の終わりを見届けたい"
「へえ…私には、理解が出来ないなあ。私は何をしてでも生きたいよ」
"あなたは、それで良いと思う"
「ありがとう。周りから薄情者って言われるし、あんまり褒められた性格ではないけどね」
そういえば、と思い至る。
「この砕けた刀たちは？」
そうすると妖精さんは一気に目に涙を溜めてぷるぷると震え始めた。
後書き
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