成り代わり杵の突撃！隣のブラック！ (ページ48)

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CASE3-19 ページ48

蜻蛉切。
蜻蛉切といえば、あの天下三名槍の一つであり、本田忠勝に使い続けられ名誉ある武功を挙げた槍。

…蜻蛉切に対するファーストコンタクトって、"御手杵"はどんな感じだろうか。
"御手杵"は三名槍に対して引け目があって、刺すしか能がないと口癖のように言う。
何かしら他の三名槍に思いがあって、ぎこちなくなるだとかそんなことがあったりするのかもしれない。

…亜種だから良いかな。
ここまでカタカタと一秒ほどで思考を終える。

「…うん。蜻蛉切ってあの蜻蛉切だろ？あと同田貫って奴とも話してねえし、どんな手合わせするか見てみたい」
「手杵や、あの蜻蛉切、とは？旧友なのか？」

三日月は俺が蜻蛉切を知っているかのように話すのが不思議だったようで、首を傾げている。
瞳が輝いて目が笑っていないように見えるのは気のせいということにしておこう。

「会ったことはねえよ。でも俺一応、天下三名槍の一本…日本の代表的な槍の内の一つなんだよ。蜻蛉切もその仲間ってこと」
「ほう、流石。手杵はそんな凄い槍だったのだな！」

目をキラキラとさせている三日月を見て、本能的に、御手杵の卑屈さを発揮すれば不味い事になるのを察した。
ので、これからは発言にもっと気を付けていこうと思う。
俺はラノベの鈍感系主人公ではないので、わざわざ地雷を踏みにいく奴ではないのである。

切国が道場への扉を開けると、声が聞こえてきた。
木がぶつかり合うような、高いながらも鋭い音。それはおびただしく重なり合い、手合わせの激しさを感じさせる。

「はっ！！」

カァン、と一際鋭い音が飛ぶ。
道場の中に入ると、蜻蛉切が長い木の棒を持っていて、同田貫の手には刀、が…無い？
そう思った瞬間、ふわりと白い布が舞い、自分の目の前で木刀の切っ先が停止した。

「…は？」

思わず間抜けな声を漏らす。
その木刀の斜め下には切国の腕がくっついている。
いや、切国が木刀を握っているのだ。

「おい、危ないぞ。もし主だったらどうなっていたことか」

そう切国が言ったところで、ようやく理解した。
俺の額に向かって一直線に飛んできた木刀が、切国によって止められたことを。

「っ！すみません、怪我はありませぬか！？」
「はは、は。ねえ、よ、大丈夫」

思わず引き攣った笑いになるのは許してほしい。
同田貫に渡されている木刀を見やり、一歩間違えたらあれが自分の額をかち割っていたかもしれないと思うと寒気がする。