CASE3-6 ページ35
刀剣への暴力や暴言。
酷使や破壊。
夜伽の強制。
ひどい環境であるのは分かるが、どうしてもそれが自身の実感とは結びつかない。
そう感じているのは自分だけでは無かったらしく、周りの刀剣も何人か首を傾げていた。
自分の同位体が被害に遭っていると聞いたとはいえ「ぶらっく本丸」の具体的な環境が分からず、理解が出来ない。
だが何人かは顔を青ざめさせていたのでとても深刻な問題なのだろう。
すると同田貫さんが後頭部をかいて口を開いた。
「夜伽って…俺たちゃ刀だぞ?人間ってのは訳わかんねぇことするな」
「人間にとっては貴方達は見目麗しいから。…ああ、同田貫。貴方も見目麗しいけれど、戦い好きな性格が相まって被害には遭いにくいと聞いたわ」
「…そうかよ。むしろンなことやってる"俺"がいなくて安心したわ」
同田貫さんが顔を背けたので、見目麗しいといわれて照れたらしい。
主君は時々真っ直ぐに僕たちを褒めてくれるので、少々恥ずかしい。
昔は不器用ながらに頭を撫でられるのが慣れず、戸惑ったものだ。
主君も戸惑っていて顔が双方赤かったのが救いであった。
「今回引き取り希望をされているのは三日月宗近、御手杵よ。三日月宗近の方が御手杵の方との一緒の引き取りを願ったらしいわ」
その言葉に何人かがざわめく。
今剣、岩融さん、石切丸さんは口を小さく開き目を見開いて驚きを露わにし、蜻蛉切さんはぴくりと肩を揺らして目を細めた。
今剣達は同じ刀工の元生まれた兄弟のようなものだし、蜻蛉切さんは三名槍と括られていた槍の事が気になるのだろう。
その姿を見ていると、酷い目に同位体があっているのは想像しにくいが、自身の兄弟が何か酷い目にあっていたらどうだろうか、と考えぞっとした。
審神者によって兄弟が目の前で虐げられていて、それをどうすることも出来ない自分。
そんな光景を想像し、顔を青ざめた。
それに思い当たった周りの刀剣も皆一様に顔を青褪めさせている。
「けれど問題が二つあるのよ。一つは、三日月宗近が人間不信気味だということ。ブラック本丸が解体された後も、何度も他のブラック本丸に攫われるの繰り返し。彼は人間である私のことをよく思わない可能性が高い」
「そんな、主にそのような狼藉を働くなど…!」
長谷部さんが思わずといった風に立つ。微かに殺気立つ彼を主君は目で抑える。
そのまま話を続けた。
「二つ目。これは御手杵の問題なんだけれど…」
「御手杵は、人間と契約する事が不可能らしいわ」
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