成り代わり杵の突撃！隣のブラック！ (ページ34)

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CASE3-5 ページ34

前田藤四郎は、主君が珍しく大きな声を上げたことが印象に残っていた。

「元ブラック本丸刀剣男士の引き取り！？そ、そんな大役私が…」
「と、とにかく私が引き取る訳には…」
「確かに、私の本丸は少ないですけど、だからといって…」
「はい、はい…え？御手杵様の方が…契約が…？」
「…私の一存では決められません。みんなに相談してから、はい」

あの気が弱くも優しい担当との通信が終わったのを察し、近侍である自分は襖に手をかけ自らの主人に声をかけた。

「主君、何かあったのですか？」
「前田…聞いてたのね」
「申し訳ありません。この前田、決して口外は致しませんので」
「いえ、別に聞かれて駄目な話ではないの。ただ、そうね…夕餉の後に全員に向けて話すわ」

そう言うと主君は仕事に戻り、自身も近侍の仕事をすべく彼女の隣についた。

主君の発言通り、夕餉の後に刀剣は集められ、上座で凛とした雰囲気の主君から報告がなされた。
何かあったのかと周りの刀剣はざわざわと落ち着きが無かったが、真剣な表情の主君を見てその場がしんと静まり返る。
それを見た主君は一息ついて話し始めた。

「急な話で悪いとは思うのだけれど、落ち着いて聞いて欲しいの。以前から私たちの本丸は人手不足を嘆かれてきました」

それは、そうだ。
前田は初短刀のため、彼女のドロップ運の無さ、鍛刀運の無さを身に染みて知っている。
彼女の采配や霊力は優秀なのに、運が無い。
それだけが彼女の評価を押しとどめている原因になっている。
今までその現実にどれだけ前田が悔しい思いをしてきたか。
しかし、今回の話にそれが前置きとしてくるということは、それに関係する話なのだろうか。
「先程、担当の方から私たちの本丸に刀剣引き取りの勧めがありました」

今度こそ、場は大きく揺れた。
刀剣引き取りということは新しい仲間が増えるということ。
戦力の拡充にもなるし、この本丸は更に賑やかになることであろう。
だが、そうなるとなぜ主君は引き取りに難色を示しているのだろうか。
その答えはすぐに発せられた。

「ですが、彼等は解体されたブラック本丸の元刀剣男士らしいです。彼等の受けたことを詳しくは話せないけれど…大体のことは説明するわ」

耳慣れない「ぶらっく本丸」という言葉。
聞いたことがあるような気もするが、意味はそれから推察できない。
だが、主君から説明されたことはひどく現実感の薄いことであった。

後書き
前田くん可愛いよね