CASE3-2 ページ31
すると、少しピリピリとした空気を纏った三日月が担当を睨んでいる。
随分と警戒しているようだ。
背中を軽く叩いた。
「あんま睨んでやるなって。悪いな担当さん。こいつ若干人間不信気味なんだ」
「…いえ。こちらこそ申し訳ございません」
「謝んなってぇ」
そう言えば、と問う。
「俺、出来ればこの刀たち持っていきてえんだけど、その審神者さんに伝えたか？」
「伝えたところ、ただの刀ならば問題ない、と」
「むしろ危ないと思うんだがなぁ」
すると、役人がふと佇まいを変えてこちらをじっと見つめてきた。
「御手杵様、三日月様。この審神者は信頼できる方です。刀剣男士様方からの信頼も厚くその絆は本物だと…私は感じました。だから、何卒…ご不満であれば、私は何だってしてみせましょう」
「…ほう」
すうと三日月がその言葉に目を細めた。
見れば担当の人もこちらを真剣に見つめて役人の方を見もしない。
審神者マニュアルやらなんやらを見たりなど、政府施設で調べた結果だが。
刀の付喪神だから神格はあるにはあるが、それでも付喪神でしかない。
付喪神が神隠しをできるかどうかと考えれば、難しい、と。
本霊がそうなのだから分霊が一人で神隠しなど出来るはずもなく、案件はほとんど無いそうだ。
だが塵も積もれば山となる。
審神者の承諾をとって本丸全員が力を合わせるぐらいのことをすれば本丸ごと神隠しできるらしい。
それなので案件は殆ど無いそうだ。
ホイホイ神隠しされたら今頃どれだけの審神者が犠牲になるんだか。
ちなみに本丸自体かなり特殊な空間らしく、人間の老化が結構遅いらしい。
今までの審神者で、刀剣男士との交際も無しでの最高齢の審神者は98歳らしい。
まだ審神者としての手腕も衰えていないそうで、まだまだ先は長そうな爺さんだとか。
まだ戦争が始まってから20年も経っていないらしく、それを考えると更に寿命は伸びていくのだろう。こわ。
まあ刀剣男士とあれやそれやするとまた変わるらしい。半神半人ぐらいになるとか何とか。
ちょくちょく異世界感を出してくる。
話が逸れた。
刀剣男士一人の分霊は神様としての力は小さい。
だが、少しだけ縛ったり呪ったりはできる。
つまり、神の前で軽々しく約束をするのは勧められない、ということだ。
もちろん刀剣男士と人間が本気でなければ約束などできないが、約束した以上人間はそれに縛られる。
この役人いい人だな、大変そうだ。
後書き
薊編は長くなります。彼女は誰を殺すんですかね？
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