白（黒）人魚は二重人格！？ (ページ10)

今日:3 hit、昨日:2 hit、合計:74,428 hit

8話ページ10

昔の夢を見た。

僕が、群れから抜け出して、アズールくん達と出会うまでの夢。

そして、僕と"俺"になった時の夢。

僕は群れから抜けた後、孤独からの不安と、生きる意味を失った絶望に飲まれていた。

『なんで、僕だけみんなと違うの？僕だって立派なシャチなのに…』

他の個体より、小さければ力も弱い。
泳ぐスピードだって、シャチの中では鈍足。

周りには楽しそうに泳ぐ人魚たち。
そんな人魚達を横目に、僕は独り彷徨い続けていた。

｢もしかしてー君！シロイルカの人魚さん？｣

｢珍しいなぁ！綺麗だし！もっとよく見せてよ！｣

そうやって寄ってくる奴らは皆、僕をシロイルカと言った。
なんで…白いだけで…シロイルカと思うんだよ。
僕はシロイルカよりも大きいぞ？！
シロイルカよりも強くて早いんだぞ！？

そう心の中で叫んではぐっと抑え、耐えてきた。

それも本の少しの間だけだった。
僕をシャチだと恐れるものは、どこにも居なくて…
それがとてつもなく悔しくて……悲しくて……

どうせなら本当にシロイルカに生まれたかった……

僕は……俺は……っ！！

『シロイルカなんて可愛いものじゃないんだよ……っ！！！！！』

自分は弱くないと強さを見せつけるため、俺をシロイルカと呼ぶやつは、片っ端から傷つけた。
そうすることでしか、自分を認めさせることが出来なかった。

傷つけて傷つけて。
周りから、冷たい目で見られるようになったころ。

俺は、別の個体として過ごしていることに気づいた。
この頃は、魔力がどうとかそんなのは分かってなくて。

ただただ、力が欲しいと思う時。
そして感情が荒ぶる時。
腹の底から力が湧いてくる感覚と、全てを壊してやりたくなる衝動に駆られていた。

その時の自分といつもの自分は、別物なんだと。
同じ僕なのに、"俺"がいることで何故か独りじゃないと思えるようになったんだ。