12話 ページ14
ジェイドside
彼は、謝りながらフラフラと僕の目の前に立ち、手をかざし始めたのです。
フロイドもアズールも身構え、彼の様子を伺っていました。
すると、パッと光が広がり、眩しくて目を閉じた時、脇腹から痛みは消え、目を開けた時には真っ赤に染まっていた箇所はなくなっていました。
怪我なんてまるでしていなかったかのようになっていたのです。
僕はハッとして彼を見ると、彼の脇腹は真っ赤に染まり、虚ろな目で僕を見て傷が消えてることを確認し、安心するかのように、彼は気を失いました。
｢！？…大丈夫ですか！？｣
｢ジェイド！？そんなに激しく動いたら傷がっ……！｣
｢いいえ、フロイド。見てください。ジェイドの脇腹には傷はありません。｣
｢え？｣
アズールに言われ、フロイドも僕も改めて傷を確認しました。
そりゃ、驚きますよね。
傷は跡形もなく消え、彼の脇腹に先程まで僕の体にあった傷がしっかりと刻まれていたのですから。
｢この方を早く手当てしましょう。｣
｢でも！そいつオレらのこと攻撃したやつだよ！？｣
｢フロイド。この方が僕を治してくれなければ、僕は死んでいたかも知れません。｣
｢……っ！｣
そう、この方が傷を治してくれなければ、僕は今頃どうなっていたのかと思うと、少しゾッとします。
｢先程も言いましたが、元はと言えば私達が彼のことを間違えてしまったのがいけないのですから。｣
｢だって、こいつシロイルカじゃないの？｣
フロイドはまだ、頭の整理が追いついていない様でした。
彼の手当てを行いながら、先程まで黒かった毛先が真っ白になっていることに気づき、
｢シャチですよ。それも、とても珍しい真っ白なシャチです。｣
この方は、無意識のうちに魔法を使っていると理解したのです。
｢熱が酷い。｣
｢アズール。魔法薬で、何とかなりませんか？｣
｢やってみないとわからないですが。やらないよりは良いでしょう。｣
直ぐにアズールが調合した魔法薬を飲ませた。
アズールの魔法薬が効いたのか、彼の治癒能力が強いのか、傷は直ぐに塞がりました。
傷は塞がったのにも関わらず、彼は苦しそうに数日、眠ったまま。
目が覚めたのは、彼と色々あってから、1週間後でしたかね？
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作者名：雨鯱 | 作成日時：2020年8月29日 21時
