人生捨てたものじゃないとはよく聞くけど僕は捨てたいわけじゃなかったんです。【人外パロ】

二十七生 ページ28

鉄枷で擦れた箇所をてきぱきと治療してもらい、空気に触れていた時のひりひり感が和らいだ。
心做しか、ぽかぽかする気がする。

「エミさん、訳して。
…A君、僕の《祝福》は傷を治すことが出来るから、処置をした部分が治ったらお風呂に入ろう。
傷跡も治すことが出来るんだけど、方法が方法だから…。
痛みがなくなったらエミさんに伝えてね。」

『…A君、しんぺいさんは祝福、と呼ばれる所謂魔法を使い、傷を治すことが出来ます。
処置を施した箇所が治ったらお風呂に入るので、治ったら私に伝えてくださいね。』

『…祝福…分かりました』

つまりは、神様の御加護で傷を治してもらっているということだろうか。
流石神様と言うべきか、俺なんかに使ってもいいのかと思うべきか。
…お風呂かぁ、お風呂自体は好きだけど、自宅の風呂にはいい思い出なかったなぁ。

「手首見つめとる」

「猫みたいやな」

「包帯噛みだしたりせんよな」

「人間にそんな習性はないんですが…」

包帯がある違和感にずぅっと包帯が巻かれている手首を見つめ、たまに首を撫でる。
俺絆創膏とか剥がしたくなるんだよなぁ…
そんなふうにぼんやりと手首を見つめていれば、するりと手を取られる。

「うっわびっくりした」

「食用？」

「食うなゾムか」

「なんやと」

「というか、帰ってきたんなら言うてくれや、兄さん」

「悪戯心悪戯心」

「洒落にならんから連絡せぇ言うとんねん」

ゆらりとなびく紫のストール、優しげな印象の少し垂れた目元、アメジストの綺麗な瞳。
初めましての人だ。
そろりと頬に手を伸ばし、頬に触れる。

「あ」

「ん、なんやこの子、随分と積極的やん」

「その子なりのスキンシップやで」

「…俺やられとらへん…」

「近付いて手をほっぺに当てさせればやってくれるで」

「兄さんそれ目逸らしちゃあかんからな」

「見つめ返したるわ」

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