3話 ページ5
あらかた仕事を片付けると、外はもう夕暮れになっていた。
安形は終始一度も起きなかった。本当にコイツ腹立つ。
「そろそろ下校時間だし、帰ろうよ」
「そうですね。帰りましょうか。」
榛葉さんの一言でみんなが帰宅準備を始めた。
私もペンケースをカバンにしまい、安形を起こした。こいつ中々起きないんだよなぁ…。
「ちょっと安形ー。起きて。もう帰るよ」
「………」
「…これは起きる様子がないな。Aさん、会長を起こしてから帰ってくれないか?」
「そうだね。じゃあ悪いけど頼むよ、Aちゃん」
「お先に失礼致しますわ」
「え、えぇ!みんな帰るわけ!?すぐ起こすから一緒に行こうよ!」
みんなが揃って帰ろうとするからとめてしまった。すると椿が出てきて、私に加勢し始めた。
「榛葉さん、さすがにAさんが可哀想です。きっと起きるので少し待ちませ」
「あーー椿ちゃんも用事があるのか。じゃあ急がないとね。という事でよろしく、Aちゃん」
「ちょ、待ってよ!あ…」
私が言い終わるより先にみんなは出て行ってしまった。椿君に至っては榛葉君に連れ去られた。
「…仕方ないか。安形、起きて。もう帰ろ。日が暮れる」
「……おう。」
安形は意外にもすぐに起きた。そしてテキパキと帰り支度をし、わずか10秒ほどで「帰ろうぜ」ってまで言ってきた。
「…あんた起きてたでしょ」
「…まぁな」
「何でわざわざ寝たフリなんかしてたのよ。みんなに置いてい「2人きりになりたかったからだよ」
「え…」
予想外の返答に少し戸惑った。安形はいつもいつも変 たいな事ばっか言ってきてたから新鮮に感じるんだろうけど今は純粋にドキッとした。
安形の顔を見ると、夕焼けに照らされてよく見えなかったが少し照れているような顔をしているのが何となく分かる。
「……はははっ、可愛いとこあるじゃん安形」
「う、うるせぇよ!いじるんじゃねえ!さっさと行くぞ!」
「はいはい」
「良かった〜、ちゃんと2人きりになれたみたいだね」
2人が校舎から出て行く様子を影から見守るのは生徒会の4人。榛葉は安形からこうするよう頼まれていたのだ。
「さて、2人も帰った事だし俺たちも帰ろうか」
「そうですわね」
4人の影もまた動き始めた。椿だけがこの状況を理解していなかったが。
「……世話の焼けるカップルだなぁ」
榛葉は遠くなる2人の影を見ながら呟いた。
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ピース(プロフ) - 続きが楽しみです(^-^)応援してます(^^)v (2020年2月12日 17時) (レス) id: 2ac36c1263 (このIDを非表示/違反報告)
EMIKO(プロフ) - イラスト描いて良いですか? (2019年10月25日 20時) (レス) id: dbece56e65 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:そると | 作成日時:2018年1月8日 12時