第二幕「目玉商品には目玉があった」 ページ4
カツカツ、カツカツと、爪の先で何度も仮面を叩く。
魔女の視線の先では、道化師が舞台の上で声を張っていた。
《次は商品番号341番、呪いの絵画「黒薔薇のアン」でございます！》
これが落札されれば、次は道化師の言っていた「目玉商品」の番だ。
仮面の群れが醜く自身の財力を誇示し合っているのを眺めながら、魔女はふぅと息を吐いた。
この悪趣味なショーは、夜が更けてから月が落ちるまで開かれる。
数ある商品の中でも「目玉商品」と称されるものは、最後の最後、ショーの
空は既に闇を失い始め、月は薄く白く溶けつつあった。
つまり、待たされに待たされて、魔女の機嫌はすこぶる悪い、ということである。
組んだ脚は絶えず細かく揺れ続け、ワインはとうに空になっている。
それを知ってか知らずか、舞台の上の道化師は落札者に丁寧に礼を述べ、さっと腕を振ると、一段と大きく声を張り上げた。
《サァサァ皆様！今宵も我らがショーをご覧いただきまして、誠に有難うございます！》
喧しく、仰々しく、戯けたようなドラムロールを背景に、道化師の声が終幕を告げる。
《こちらが本日最後の目玉商品となります！》
ガラガラガラ、と長身の道化師が車輪付きの大きな檻を転がして舞台に現れた。
ちょうど立方体のそれには黒い布が掛けられており、その奥からはジャラジャラと鎖の揺れる音がする。
《商品番号342番！見目麗しい子羊でございます‼︎》
道化師の声と同時に、ばさりと布が剥がされた。
錆びた鉄格子の向こうには、長い鎖と白い塊。
白銀色の照明を反射してブロンドの髪がチカチカと瞬き、透き通るような白い肌、燃えるような赤い瞳に、観客は「ほう……」と息を吐く。
「この世で１番美しい宝石」───それは小さな、そして端正な、彫刻の如き少年だった。
『……成る程、矢っ張り君は趣味が悪いな』
魔女はポツリと呟いて、仮面の奥の片目を細める。
「5000万！」
「8000万！」
「ならば１億でどうだ！」
誰もがその少年を手に入れようと、躍起になって数字を叫ぶ。
魔女はゆるりと頬杖を解き、一度も触れるつもりのなかった、小さな白い木札を取った。
『３億』
張らずともよく通るその声に、会場全体が戸惑い揺れる。
道化師は特等席に座る魔女を見上げ、得意げにニィッと笑って見せた。
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シディア - わぁ！！！いなくなってた間にまた面白そうな作品が！！！他の作品も含めて続き楽しみにしています！ (2022年1月10日 14時) (
レス) id: 939d5c7779 (このIDを非表示/違反報告)
よなが(プロフ) - 暇なふぁいるさん» 気に入っていただけたようで嬉しいです。ありがとうございます！ (2021年11月23日 13時) (レス) @page7 id: 58d4b2eb6a (このIDを非表示/違反報告)
暇なふぁいる(プロフ) - クラウンめっちゃ好みのキャラです！これからも読ませていただきます (2021年11月23日 12時) (レス) @page6 id: 115c38c07a (このIDを非表示/違反報告)
よなが(プロフ) - 暇なふぁいるさん» フラグ付いてるの今気付きました！外したと思ってたんですけど……すみません！ご忠告くださった皆様、ありがとうございます！申し訳ありませんでした！！！ (2021年11月23日 10時) (レス) id: 58d4b2eb6a (このIDを非表示/違反報告)
暇なふぁいる(プロフ) - フラグついてますよ！！ (2021年11月23日 9時) (レス) @page5 id: 115c38c07a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よなが | 作成日時：2021年11月22日 3時
