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「ねえドラコ？」
今日もAは、愛おしいものを見つめるのと同じ眼差しでドラコを見つめる。
それに答えるようにして、ドラコはAを見つめ返す。こうして彼女の目を見られるようになるのに、ドラコは1年と6ヶ月の年月を要した。
Aは少し恥ずかしそうに笑いながら、「あのね…」と話を続ける。
「わたし、ドラコがすきよ」
しんでもいいと思った。
ずっと、ずっと彼女から嫌われないようにと思って動いていたが、心の奥底では彼女に愛されたいと思っていたのだ。
彼女が自分を愛してくれているのだと知り、ドラコはうれしくてしょうがなかった。
今すぐにでもAを抱きしめて、唇にキスを落としてやりたかった。僕もだと、愛の言葉を囁きたかった。
…でも。
過去、彼女に対して暴言を吐き、暴力を振るった事実は消えないし、ドラコを庇っていたことで記憶を失うことになってしまったという事実も消えない。
罪悪感で彼女の世話をしているわけではなかったが、その思いは拭いきれなかった。
過去の過ちに加えて、記憶を失った彼女に対してもドラコは多くの嘘をついて今を作っている。
愛と、罪と、その両方でドラコは揺れていた。
いっそ、全て吐いてしまった方が楽なのだろうか。
僕はあなたを差別的に扱い、顔中を殴り、酷い言葉を吐いた挙げ句、僕を庇ったせいであなたは記憶を失いました。ごめんなさい。
…そんなこと、言えるはずもない。
事実を話したら、彼女はドラコから離れていくだろうか。そうしたら、彼女は一体誰を頼るのだろう。
彼女にはドラコしかいないし、ドラコはAに幸せに生きて欲しかった。そうなれば、選択肢は一つ。何も話さないだけだった。
「どうして泣いているの？」
どうやら泣いているらしい。ドラコがそう気づいたのは、Aに言われてからだった。
彼女はいつかのようにドラコの頬に手を添え、涙を親指で拭う。それが過去と重なって、ドラコはますます涙するだけだった。
「わたし、ドラコがすきよ。ドラコは、わたしのことどう思っているの？」
Aはもう一度好きだと伝えると、いつものごとく、顔を覗きこむようにして首を傾げる。
「…僕もすきだ」
ドラコも好きだと返せば、彼女は嬉しそうに微笑んで、「うれしいわ」とドラコの頬に口づけた。
ドラコは心がきゅっとして、これが幸せなのか、苦しみなのかわからなかった。
終わり
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ぽれ(プロフ) - 貴方の作品が本当に好きです。話数は少なめなのにそれに劣らない綺麗な言葉選びに登場人物の心情表現が本当にずば抜けてて普通に泣けました。ありがとうございます……、 (1月24日 0時) (
レス) id: aeee7d47d3 (このIDを非表示/違反報告)
レネット(プロフ) - ドッ…ドッ…ドラコォ…。最高です、更新頑張ってください。 (2021年10月17日 23時) (レス) @page11 id: ec8ec8961f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：深海
| 作成日時：2021年10月10日 20時
