【stpr】no title【stm】 (ページ3)

今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:21,971 hit

第二話ページ3

▼▽▼

「(………えーっと)」

状況を説明しよう。

帰宅のバスから降りて少し歩くとある、シャッターの閉まった焼き鳥屋さんの前で、王子こと桃瀬里見が泣いていた。

……それだけ。

ぐすっ、と音を立てて整った顔が崩れていくのは、少し離れたここからでも十分に見えた。

「(ど、どうすればいいんだこういうとき)」

冷静に冷静に、と、とりあえず案を考えよう。

案その１：「慰める」

これね、ザ・王道。

うーん、簡単そうに見えて意外と難しいからなあ…。泣いてる人、しかも知らない人をフォローできる程の人間じゃないし…。

案その１→没。

案その２：おごり

『へい桃瀬くん、泣いてるの？あ、そうだいいものあげる！はい、お菓子！』

…みたいな。……うん、これも没かな(遠い目)

案その２→没

案その３：スルー

いや、いやいやいやいや！！！それだけはダメ、絶対ダメ！！！それだけは人間としてダメだわ！！(一人ツッコミ)

案その３→没

「(……ううん、どうしようかな)」

結局振り出し。一番良いのは案その１だろうけど、知らない人に慰められてもいやだろうし…。案その２と３はまあ、うん。ダメだね←

「(……あ、雨だ)」

そんなこんなで固まっていると、ポツポツと雨が降ってきた。雨はあっという間に強くなってしまう。

とりあえず、いつも鞄に入れてある傘を差す。

「(……桃瀬くん、傘持ってないよね)」

桃瀬里見はボーッと立ち尽くしたままだ。その顔は手で隠れていて見えないが、肩が小さく上下している。まだ泣いているのだろうか。

その姿はなんだか、小さな子供のように見えてしまった。

「(……よし)」

我ながらクサいが、泣いている人間を放置する訳にもいかない。

グッと意を決して歩き出す。女佐倉、いざ参らん！！

・
「……あ、の」