episode.60 ページ10
*
渡辺side
ラウールから発せられた衝撃の一言に、俺たちを取り巻く空気が一瞬にして凍りつくのを感じた。
何か言わなきゃ、そう思うのに口から漏れるのは音のない空気だけ。
喉の奥がきゅっと狭くなって、頭の中がどんどん混乱していく中で、やっと絞り出した言葉。
「、、おい、冗談、、やめろって、、」
いつもみたいに、キーキー甲高い声で『うるさい！しょっぴーは黙ってて！』なんてそんな返事を期待してたのに。
ラ「俺もね、勘違いであれって思ってるの。
でも、ひとりで消化する自信なくて、みんなこと巻き込んじゃって、ごめんなさい。
そんなわけないだろうって、みんななら冷静に言ってくれると思ったから…」
嘘だ。
こいつに限って、不確かな推測にメンバーを巻き込んだりするはずがない。
きっと根拠も証拠もあって、結びついた先の答えがあまりに受け止め難いものだったからだろう。
彼自身の、どうか思い過ごしであれ、そんな気持ちがひしひしと伝わってきた。
向「、、ラウは、なんで、そう思ったん、、？」
沈黙を破ったのは康二。
取り乱しもせず、いつもの優しい口調で。
その言葉に少しホッとしたような顔を見せてラウールがぽつりぽつりと話し出した。
ラ「ちょっと前にさ、MV撮ったでしょ、あの時…」
ラウールだけが見ていた阿部ちゃんの姿。
ただただ楽しい思い出しかなかったあの撮影中、そんなことが起きていただなんて。
ラ「阿部ちゃん時々さ、消毒っていうか、保健室みたいな、、なんか、そんな匂いしてなかった、、？」
保健室の匂いなんてもう遠い昔に忘れてるはずなのに、ハッとしたような顔をしたメンバーは何人もいた。
彼の幼い頃の記憶と重なったという阿部ちゃんの様子は、何も知らなかった俺からしたって容易く結びついてしまうものだった。
ラ「、、、みんなさは、、________病って、聞いたことある、、、？」
心臓が不規則にドクンと大きく跳ねたのがわかった。
ついこの間、ドラマで見たやつだ。
若い女の子が、一生治らないという現実や生涯打ち続けなければならない注射という行為に葛藤し、苦しみもがく姿に、俺も少し泣いてしまったっけ。
「、、え、待って、そしたら、は？、、一生注射打たなきゃ生きられねぇってこと、、？」
『知ってるんじゃん、違うって言ってよ。』
ラウールの小さな声が震えて聞こえた。
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ストロベリー - 3早く読みたいです 頑張れ〜 (2023年4月2日 21時) (
レス) id: 78d64c6e31 (このIDを非表示/違反報告)
円周率 - いつも楽しく読まさせていただいています。3のほうも読みたいと思っているのですがパスワードを教えてもらうことは可能でしょうか？ (2023年3月8日 6時) (レス) id: 6ee190949a (このIDを非表示/違反報告)
みどり - 続き気になるので、楽しみに待ってます (2022年11月26日 1時) (レス) @page45 id: 1e919caffa (このIDを非表示/違反報告)
くろ(プロフ) - いつも更新楽しみにしてます。ちゃんと他のメンバーに支えられながらライブできるといいですね、、、 (2022年7月25日 1時) (レス) @page38 id: 436e54c814 (このIDを非表示/違反報告)
あお - このお話大好きです！更新待ってます、頑張ってください！ (2021年10月13日 15時) (レス) id: b9c7362213 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しぃ | 作成日時：2021年5月23日 22時
