episode.44 ページ44
*
阿部side
こんなの普通じゃないって分かってる。
だけど、赤黒く腫れ上がった腕が、その痛みが、言葉にできない辛さを具現化してくれているようで、不思議と気持ちが落ち着いた。
構って欲しい訳ではなくて、ただ単純に、自分からそれが見えていると安心するから、俺はメンバーの前でも構わず腕捲りをしていた。
それでも、カメラに映るのはさすがにまずいから撮影が始まったら袖を下ろそうと思ってたんだけど、すっかり忘れてカメラの前に立ってしまった。
「腕、どうした？」
あれ以来気まずくてお互い避けていた翔太との久々の会話。
翔太の意図が何であれ、口が滑っても『自分でやりました』なんて言えないから、はぐらかすような返事をした。
それが翔太に火をつけてしまったようで、撮影終わりの楽屋、目も合わせず低い声。
渡「阿部、ちょっとこっち。」
メンバー全員の集まる楽屋から、その隣の空いた部屋に連れ出される。
限界を告げるカウントダウンが始まった。
渡「最近、っていうかもう何ヵ月も、お前のそれなんなの？いつまでだらだら引きずってんの？なあ？」
“お前のそれ”
はっきりと言われなくても、隠しきれていない体調の悪さを指していることはすぐに分かった。
「ごめん、ちゃんと病院行ってるんだけど、」
渡「そうじゃなくて！」
説明をしようとする俺の言葉には少しも耳を傾けてくれない。
渡「お前がそうやって言うから、俺らみんな気遣ってんだよ。
俺らが心配してやってんのがどんだけ伝わってんのか知らないけどさ、それでおまえがちゃんとしないのってさ、
ルール違反だと思わねえ？」
頭を鈍器で殴られたような衝撃が走る。
ルール違反。
なんだよそれ。
言いたいことは山程あるのに、上手く言葉が出てこない。
その代わり、堪えきれない涙がどんどん溢れてくる。
渡「泣くようなことじゃねーだろ。」
そう言い残してその場を去って行った翔太。
ここが仕事場なことも、隣の部屋にはメンバーがいることも、気にする余裕もなく俺は声をあげて泣いた。
「、、っ、もっ、やだ、っ、だれかぁっ、、たすけっ、って、よ、、っ」
みんなのためか、自分のためか、よく分からないけど、俺は今日まで頑張ってきたつもりだった。
だけどもう、限界だ。
結局また迷惑かけちゃうね、ごめん。
逃げてもいいかな？
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あお - 続きが更新されるのを楽しみにしてます。 (2021年5月6日 1時) (
レス) id: 5edf3afd73 (このIDを非表示/違反報告)
ユキト(プロフ) - 苦しくて泣いちゃうけど読み応えあります、大好きな作品です。 (2021年4月19日 1時) (レス) id: 08a263e11b (このIDを非表示/違反報告)
藍華(プロフ) - はじめまして！この作品を愛読させて頂いているものです。ほんとにお話を読むたび苦しくなるのですが、何回も読み返すくらい大好きな作品です! (2021年4月9日 0時) (レス) id: 55f4a21869 (このIDを非表示/違反報告)
恋した月(プロフ) - 初めまして、このお話が好きすぎるのでコメントさせてもらいます()どの描写もabらしくてSnらしくて本当に美しいくて苦しくて大好きです。これからも応援しています。 (2021年2月13日 17時) (レス) id: d6f1a4b68b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しぃ | 作成日時：2021年1月26日 12時
