episode.41 ページ41
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阿部side
注射を打たなくなってから１週間。
なんだ、大したことないんじゃん。
なんて思っていたのは２日目くらいまで。
睡眠不足に加えて主治医のお説教必至の数値を叩き出す毎日。
とにかく怠くて、動悸、息切れ、吐き気はもはやお決まり、体力の限界を知らせるように日中は酷い睡魔に襲われる。
そんな状態では空き時間も勉強どころではなく、楽屋では寝たり横になって休んでいることが増えた。
今日だって、あんなに張り切っていたはずのクイズ番組の収録なのに、俺はギリギリまでソファで寝ていた。
最後にクイズノートを開いたのはいつだったかも思い出せないくらい、全てに余裕がない。
いつもあれだけの準備をして臨むクイズ番組に何もしないで出たわけだから、当然の結果と言えばそうなんだけど、大した見せ場も作れず呆気なく収録を終えてしまった。
『たくさんテレビ出てればそんな時もあるよ』馴染みの共演者さんの優しいフォローが今日はとても痛かった。
楽屋に戻っても、いつものメンバーからのやりすぎなくらいの励ましはない。
その代わり耳に届いたのは、
『そんなに落ち込むなら収録前寝てないで勉強してたら良かったのに』
冗談っぽく言ってるんだろうけど、翔太の目つきは本気のやつだった。
心臓がうるさいくらいにバクバクと跳ね上がる。
反論なんていくらでもできるだろう、何か言えよ、もう一人の自分が心の中でそう叫ぶのに、何一つ言葉が出てこない。
翔太に乗っかって他のメンバーも色々言い出して。
でもそれも全部、今の俺の心では冗談として受け止めることができなかった。
じわじわと目に涙が溜まるのを感じて、でもここで泣くわけにはいかなくて、鞄を抱えて逃げるように楽屋を飛び出した。
いつものようにできるだけ離れたトイレを選んで逃げ込んでも、誰も追いかけて来てはくれない。
悔しくて、苦しくて、悲しくて、辛くて
一度流れた涙は止まることなく溢れてくる。
病気だと分かってから、
自力で立てなくても執念で劇場まで向かい
無理を言って入院を短くしてもらい
体調よりもなによりも仕事を優先してきたはず。
仕事に穴を開けることだけは絶対にしたくなかった。
それなのに、泣きすぎて酸欠になった頭は
『どうすればここから逃げられるか』
それしか考えることができなかった。
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あお - 続きが更新されるのを楽しみにしてます。 (2021年5月6日 1時) (
レス) id: 5edf3afd73 (このIDを非表示/違反報告)
ユキト(プロフ) - 苦しくて泣いちゃうけど読み応えあります、大好きな作品です。 (2021年4月19日 1時) (レス) id: 08a263e11b (このIDを非表示/違反報告)
藍華(プロフ) - はじめまして！この作品を愛読させて頂いているものです。ほんとにお話を読むたび苦しくなるのですが、何回も読み返すくらい大好きな作品です! (2021年4月9日 0時) (レス) id: 55f4a21869 (このIDを非表示/違反報告)
恋した月(プロフ) - 初めまして、このお話が好きすぎるのでコメントさせてもらいます()どの描写もabらしくてSnらしくて本当に美しいくて苦しくて大好きです。これからも応援しています。 (2021年2月13日 17時) (レス) id: d6f1a4b68b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しぃ | 作成日時：2021年1月26日 12時
