episode.13 ページ13
*
岩本side
今日は本番前に新しい衣装のチェックがあった。
採寸は１ヶ月前だから特に直すところもなくすぐ終わったんだけど、周りのスタッフさんがやけにバタバタしていて「間に合わないよ！急いで！」なんて声が聞こえる。
「誰か衣装トラブったんですか？」
場を持たすための雑談のような気持ちでそう聞くと
ス「阿部さんの衣装が合わなくて。採寸から激痩せしちゃったみたいなんですよ。」
「え、そんなにっすか？」
最近の阿部はよく食べてる印象だったから驚いた。
役に合わせて増量する俺の隣でよく一緒に大福とかおにぎりとか食べてた。
いつも以上に阿部ちゃんの「お腹空いた」を聞いていたような気もするし。
そんなに衣装合わなくなるくらいって相当だよな。
毎日見てるから、全然気が付かなかった。
終わったら飯誘うか。
舞台が始まり、新しい衣装に着替えて袖に向かう俺の前には阿部ちゃんの姿。
慌ててた衣装直しも間に合ったみたいで、きちんとサイズを合わせられた衣装を身に纏っていた。
すると、狭い通路でJr.とすれ違った時、Jr.の子と軽くぶつかったように見え、そのまま阿部ちゃんは転倒してしまった。
すぐに駆け寄って手を取り立ち上がらせる。
「大丈夫か？」
阿「あ、ごめん照。大丈夫大丈夫。」
横でひたすら謝り倒すJr.の子にも笑顔を向けて、出番があるからもう行きなと促した。
慌ただしい舞台裏、阿部ちゃんにも次の出番があったからそれ以上何も言えなかったけど、俺はその場面に少し違和感を覚えた。
ぶつかったとはいえ、相手は阿部ちゃんよりも小柄で、軽い接触程度に見えた。
そんなこと、狭い舞台裏ではよくある光景だ。
それに、あの崩れ落ちるような転び方は普段から鍛えている俺らではなかなかしないようなものだった。
終演後、気掛かりなことを確かめるために、まずは阿部ちゃんではなくさっきのJr.の子に声を掛けた。
「お疲れ様、ちょっと良いかな？」
だいぶ強張った顔で俺の前にやってきたJr.の子。
「ごめんごめん、全然、怒ってるんじゃなくて、素直じゃない阿部の代わりに教えて欲しくてさ。」
すると彼はきょとんとした顔で俺の方を見つめる。
「あの時さ、そんなに強くぶつかってないよね？君と軽くぶつかったくらいで阿部が倒れるとは思えなくて。」
Jr.「…はい。あの場面、よく阿部くんとすれ違うんですけど、こんなの初めてで…」
やっぱりか。
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あお - 続きが更新されるのを楽しみにしてます。 (2021年5月6日 1時) (
レス) id: 5edf3afd73 (このIDを非表示/違反報告)
ユキト(プロフ) - 苦しくて泣いちゃうけど読み応えあります、大好きな作品です。 (2021年4月19日 1時) (レス) id: 08a263e11b (このIDを非表示/違反報告)
藍華(プロフ) - はじめまして！この作品を愛読させて頂いているものです。ほんとにお話を読むたび苦しくなるのですが、何回も読み返すくらい大好きな作品です! (2021年4月9日 0時) (レス) id: 55f4a21869 (このIDを非表示/違反報告)
恋した月(プロフ) - 初めまして、このお話が好きすぎるのでコメントさせてもらいます()どの描写もabらしくてSnらしくて本当に美しいくて苦しくて大好きです。これからも応援しています。 (2021年2月13日 17時) (レス) id: d6f1a4b68b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しぃ | 作成日時：2021年1月26日 12時
