気だるい朝の出来事 ページ1
下着にタンクトップ。まだ、生温い9月の朝。
フワフワの布団にくるまって、大きなクッションと枕の間に鼻を埋めた。
香るのは煙草と、柑橘類の香水。それは間違いなく彼の香りだ。
「んん…………。」
寝返りをうった彼の腕が、私の腰にすっ、とまかれた。
確信犯だ。
「銃兎、狸寝入り止めて。」
不機嫌に言って見せれば、クツクツ喉を鳴らす音が聞こえる。ひとしきり笑った後、彼は体を起こし、私の頭をわしゃわしゃと撫でてくる。
其れが気持ちよくて目を細めると、お前は猫か、とまた楽しげに笑う声が耳に入る。
冗談混じりに、
「にゃぁ」
と小さく鳴いてみる。また笑い飛ばしてくれるかと思ったら、彼はピタリと動きを止めた。
何が彼の神経を逆撫でしたのかと、自分の行動を脳内でぐるぐる考え直していると、彼は私の耳元に口を寄せ囁く。
「あんまり可愛いことすんなよ、襲うからな。」
その一言に耳が熱くなる。もう、と思いながら耳を両手で押さえていたら、彼は今度こそ楽しげに笑い、朝食を作ってくる、と寝室を後にした。
取り残された私は、彼のクローゼットの中から適当なパーカーをとり、床に散らばった自分の服の中から短パンを見つけ出し身に付ける。
軽くスマホをいじって、メールやLI○E、T○itterの通知を確認した。
『こんにちは、Aちゃん。今夜、×▽ホテルに10時でどうかな。Aちゃんに会えるの楽しみ(*^^*)………』
気味の悪いメールだが、自分から始めたことだと心を落ち着け返信する。
『んー、10時かぁ。もうちょっと早めが良いな。おにいさんに早く会いたいから( 〃▽〃)』
自分でもうんざりするほど、ぶりぶりした文面を読み直し送信ボタンを押す。
充電器を繋げたままスマホを放り投げ、朝の香りがするキッチンへと足を動かす。
「おはようさん、気分はどうだ?仔猫ちゃん。」
「もう、それ引きずらないでよ………」
やはり、朝はこうでなくては。
彼の小さなおふざけと、暖かい彼のご飯。
テレビのニュースの騒音、近所の犬が吠える声。
これが全て無くては、私に朝は来ないのだ。
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作者名:秋霖時雨 | 作成日時:2018年12月10日 18時