検索窓
今日:5 hit、昨日:1 hit、合計:2,208 hit

気だるい朝の出来事 ページ1

下着にタンクトップ。まだ、生温い9月の朝。
フワフワの布団にくるまって、大きなクッションと枕の間に鼻を埋めた。

香るのは煙草と、柑橘類の香水。それは間違いなく彼の香りだ。
「んん…………。」
寝返りをうった彼の腕が、私の腰にすっ、とまかれた。

確信犯だ。

「銃兎、狸寝入り止めて。」

不機嫌に言って見せれば、クツクツ喉を鳴らす音が聞こえる。ひとしきり笑った後、彼は体を起こし、私の頭をわしゃわしゃと撫でてくる。

其れが気持ちよくて目を細めると、お前は猫か、とまた楽しげに笑う声が耳に入る。
冗談混じりに、

「にゃぁ」

と小さく鳴いてみる。また笑い飛ばしてくれるかと思ったら、彼はピタリと動きを止めた。

何が彼の神経を逆撫でしたのかと、自分の行動を脳内でぐるぐる考え直していると、彼は私の耳元に口を寄せ囁く。

「あんまり可愛いことすんなよ、襲うからな。」

その一言に耳が熱くなる。もう、と思いながら耳を両手で押さえていたら、彼は今度こそ楽しげに笑い、朝食を作ってくる、と寝室を後にした。

取り残された私は、彼のクローゼットの中から適当なパーカーをとり、床に散らばった自分の服の中から短パンを見つけ出し身に付ける。

軽くスマホをいじって、メールやLI○E、T○itterの通知を確認した。

『こんにちは、Aちゃん。今夜、×▽ホテルに10時でどうかな。Aちゃんに会えるの楽しみ(*^^*)………』

気味の悪いメールだが、自分から始めたことだと心を落ち着け返信する。

『んー、10時かぁ。もうちょっと早めが良いな。おにいさんに早く会いたいから( 〃▽〃)』

自分でもうんざりするほど、ぶりぶりした文面を読み直し送信ボタンを押す。
充電器を繋げたままスマホを放り投げ、朝の香りがするキッチンへと足を動かす。


「おはようさん、気分はどうだ?仔猫ちゃん。」

「もう、それ引きずらないでよ………」

やはり、朝はこうでなくては。
彼の小さなおふざけと、暖かい彼のご飯。
テレビのニュースの騒音、近所の犬が吠える声。
これが全て無くては、私に朝は来ないのだ。

寒くて寒くて暖かい夜の日→



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (2 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
6人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:秋霖時雨 | 作成日時:2018年12月10日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。