午前零時の魔法使い2【knmc】

57夜 ページ8

「A、いじるのもそれくらいにしとけよ」


「そうですよ、僕も巻き込まれるなんて聞いてません」


「あはは、言ってなかったからね」


「あーあーうるせえうるせえ」

「……あ、2人とも慣れてますし、踊れたりするんですか？」


「無理」



嘘。

教えて貰っていたので少しは踊れる。
踊りたくないだけで。

踊るのは嫌いだ。パーティとか、そういうのも全部。
その場にいるのも嫌い。居心地が悪いし、変な噂が流れがちだから。

面倒だ。意地でも踊りたくない。



「まぁ……人並み程度には……？」


「葛葉くんは踊れるんですね、やってみませんか？」


「ここじゃ無理でしょ」



家具に当たって転ぶのがオチだ。

踊るにしてももっと広いところじゃないと。



「本社に行くんです」


「は？」


「葛葉くん」


「はいはーい……」


「まって」


.


.


.


「…………」


「A？」


「私踊るなんて一言も」


「今度シュークリーム買ってきますから」


「……許す」


「ちょろ」


「ラグーザ」


「ハイ」


「んふふ、ちょっと待っててくださいね」



…行ってしまった。

……ここが本社か。
広い。すごく広い。

ていうかガッツリドレスなんだけど。
今はどこにも人がいないからいいけど、見られたら相当恥ずかしい。



「……おまたせしました、行きましょうか」


「行くって言っても……どこに？」


「広いところがない、それなら広いところに行けばいいんですよ」

「スタジオに行きます」


「……えぇ…」



何もそこまでしなくても…。

スタジオいっぱいで入れないとかないかな、そんな淡い期待を抱きながら刀也に手を引かれ歩き始めた。




すごく、楽しそうな顔をしていた。

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