最終話:たとえ、君が見えなくなっても ページ39
あれから5年の月日が流れた。私もAが遺してくれたノートを頭の中に叩き込んで、生活は君がいるみたいに変わらずだよ。
「パパー。」
「んー?どうしたの夏穂。」
「こんなの見つけたー。」
「それって…。」
君がいつも気に入って着けてたバレッタ…。
「それはね…ママのお気に入りのバレッタ…髪飾りなんだよ。」
君が残してくれた大切な大切な愛娘…しっかり受け取りました。君そっくりになってるよ。
「ママのー?」
「うん…着けてあげようか?」
「うん!!」
もう今年で6歳になるんだ。来年からは小学生になるんだよ?早いよね子どもの成長って…。
君にも…見せてあげたかったな…。
「似合うー?」
「うん、似合うよ…ママみたいだ。」
夏穂だって分かっているのに…君が戻ってきたみたいに見えて…
「パパ…?なんで泣いてるのー?」
「ううん…ママを思い出しただけ。」
もしも表情豊かだったら、君もこんな感じだったのかなあ…。けど、君はあのままの君の方が良い、私はその君の方が好きだ。美しくて綺麗なフランス人形が君にはピッタリだ。
「ママそっくりだよ夏穂…。」
「ママ喜んでくれてるかなあー。」
“可愛いよ夏穂。貴方の方がよっぽど似合うよー。フランス人形の方が良いなんて…太宰くんは…ううん、治くんは変わってるね。でも、ありがとう。フランス人形で良かった。”
「えっ?」
後ろを振り向くと、うっすらとヘラヘラとへらりとした笑顔じゃなくて、私だけに見せる私だけの笑みで立ってるのが…見えた気がした。
「パパ…?」
「ううん、何でもないよ。ママすっごく喜んでたよー。嬉しそうだった。」
「なんで分かるの?」
「んー?なんでかって?だってーパパはママが好きで…大好きで…一番だ。一番だから…1番愛してる人だから分かるんだよ?何でも分かるんだよ?」
「えー、良いなあー。」
「夏穂にもきっと分かる日が来るよ。さぁ、保育園へ行こう。」
「うん!!」
君が見えなくなる前に…たくさんのことを伝えたかった。伝えておきたかった。けれども、どれだけ後悔しても遅いんだ。
願うならもう一度君に会いたい。叶うなら君が見たい。
けど、叶わないんだ。
私も何年前も何千年前でも…先でも万でも億でも…、ずっとずっとずーっと君しか愛さないし愛せない。
私に君が見えなくても…見えなくなっても…
君が私を…娘が…見えてるなら…それでいいかな…
END
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人生楽しんだもん勝ち - めちゃくちゃ泣きました、こんなに泣いたのは久しぶりでした。素敵な作品をありがとうございます。 (2021年8月3日 14時) (レス) id: 0301fd6d5d (このIDを非表示/違反報告)
シュメール人 - なんか、、やばい、、、、、 (2021年5月18日 1時) (レス) id: b636df43a5 (このIDを非表示/違反報告)
星 - コメント失礼します。凄く感動しました。素晴らしい作品を有難うございます。 (2020年5月4日 18時) (レス) id: 43b5f5b23e (このIDを非表示/違反報告)
あいり(プロフ) - 占ツクみて何年も経ちますがこんなに泣いたの初めてです…最高の作品でした!!本当にありがとうございました。 (2020年5月3日 23時) (レス) id: 0ebbee04e8 (このIDを非表示/違反報告)
華 - 泣きすぎてやばいです!呼んでいた1時間があっという間でした!本当にありがとうございました! (2020年1月4日 2時) (レス) id: 29d08050fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中二半の彼女は霜月さん | 作者ホームページ:
作成日時:2019年7月6日 2時