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「ヒロ、すまない。こいつに不快な思いさせられなかったか」
「現在進行形で私に不快な思いをさせてんのはお前だよ離せゴリラ」
「お前は本当に何も学んでないみたいだなニワトリ。今すぐトラック詰め込んで出荷するぞコラ」
「サイテー」
女子をニワトリ扱いした挙句に出荷するとか最早酷すぎて笑う。
これでも一応貴方の部下なのでもう少し可愛がっていただけませんかね。そんなんだから風見さんの胃に穴が空くんですよ。ブラック企業反対。
こんなところストライキしてやる、と思ったがそもそも公務員はストライキ出来ないんだった。
この惑星は本当に住みにくいところである。さっさと火星に行きたい。
ニコニコと笑いながら片手で頭を捻り潰してくるゴリラ上司の足をゲシゲシ蹴っていると、それを側から見守っていた諸伏さんが突然吹き出して笑い始めた。
なんで笑われたのか分からなくてお互いに顔を見合わせるベビーフェイス上司と私。
相変わらず顔だけは良いですね。顔だけは。
「何笑ってるんだよ、ヒロ」
「いや、ごめんごめん。二人があんまりにも仲良さげでさ」
「はぁ?これのどこが仲が良いって言うんだ」
「ゴリラと馴れ合うくらいならまだ犬の方が良いです」
「その減らず口今すぐ縫い合わせてやるよ」
「やってみやがれクソ上司。その前にお前のド玉ぶち抜いてやる」
「そういうとこだよ」
意味が分からない。私は本気で上司の股間を蹴り上げようとしているのに、自分の親友が醜態を晒してもいいと言うのか。
親友って意外と薄情なんですね。学びが増えました。
……まぁ、でも。
「……君が生きていてくれて、本当によかった……」
あんな泣き顔を見るよりは、笑ってる顔の方が良いような、そんな気もする。
ポアロから警察庁までの帰り道。
俺は先に向かってるよ、という諸伏さんの背中を見送って、私達はいつもより少しゆっくり目に歩く。
建物の隙間から差し込む夕日が、東京の街を真っ赤に照らしていた。
「……あの、降谷さん」
「なんだ」
「人に感謝されるって、案外良いものですね」
彼に救われてからの、今日までの日々。
色んな人に“助けてくれてありがとう”と言われた日々。
色んな人に笑顔で名前を呼んで貰えた日々。
「これが、生きるってことなんですかね」
夕日を見つめる私の言葉に、降谷さんはただ一言「さぁな」とだけ呟いた。
______こんな日常も、案外悪くない。
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メル(プロフ) - これはまじで神作だわ、、初めてここまで鳥肌のたつ作品に出会えました。 (4月19日 21時) (レス) @page35 id: 4a64b135ae (このIDを非表示/違反報告)
脱兎@さき(プロフ) - これが神作ってやつか…………最高すぎました (4月15日 18時) (レス) @page35 id: 474e2f0f3d (このIDを非表示/違反報告)
向日葵蜜柑 - 好きです(唐突な告白) (6月15日 7時) (レス) @page35 id: d4d5a8cd26 (このIDを非表示/違反報告)
めいめい(プロフ) - やばい、すき (6月12日 21時) (レス) @page35 id: 19d12ec8ba (このIDを非表示/違反報告)
陽毬(プロフ) - 構成から何からもう最高に格好良過ぎ大好き。夢主は当然設定とその小出し方がもうほんとドタイプだし終わり方も最高過ぎた……。まじで良いお話ありがとうございます (5月30日 12時) (レス) @page35 id: 22cb640d25 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:無糖 | 作成日時:2022年4月29日 0時