Scene40 誕生日 ページ40
「風が涼しいねー!」
気分転換を兼ねて、手術後初めての外出。行き先は、当然セントラルパークだ。
今日は9月23日。10月の影も見え始める、涼しい日だった。
Aは久しぶりに吸う外の空気に胸踊らせ少し早足になって、思い出の樹の下でくるっと振り返った。
「遅いよ、シュウ君!」
「わかってる。Aったら、元気だな」
「あら、おめでたいことでしょ?」
シュウは元気いっぱいまではいかなくとも、今まで以上に快活なAの姿を見て微笑みながら少しだけ速度を速めて歩いた。
樹の下にはフブキとクッキーもいた。今日の、シュウの誕生日を祝うためにこっそりAと計画を立てて隠れて来たのだ。
「フブキ、クッキー、お前たちも来ていたのか!」
驚くシュウに、Aとフブキは言った。
「シュウ君、お誕生日おめでとう!」
「シュウさん、お誕生日おめでとうございます!」
「ワン!」
正確にはクッキーも。
シュウは急いで日付を確認して、しばらく間を空けてから言った。
「本当だ。今日、俺の誕生日だったんだ…ありがとう」
ここ1カ月ほど、大会やAの病気のことで目一杯で、自分の誕生日のことなどすっかり忘れてしまっていた。
「忘れてたんですか?」
フブキは軽く笑って、クッキーを抱き上げて言った。
「せっかくクッキーも連れて来たんだけどな……って、おい、クッキー、待て!」
クッキーはフブキの腕から脱走した。フブキも慌てて追いかける。
「クッキー、なかなか気がきくな」
シュウは口角を上げた。
「? どういうこと?」
「あいつは頭が良いから、俺たちを2人きりにしてくれたんだよ」
「なるほどね。…あのさ、私、特にプレゼント用意してないんだけど……」
Aは申し訳なさそうな顔をした。
「いいさ、俺はAに“希望”の大切さを教わったからね。でも、しいて言うなら…」
シュウはいたずらっぽい含みのある笑みをAに向けた。
「プレゼントは、Aの笑顔をいっぱい見せて欲しい。今は俺だけにね」
雲に隠れていた太陽がちょうど顔を出し、まぶしいくらいに明るい光で恋人たちを照らした。小さな犬は少年を弄ぶように走り回った。
シュウとAは、2人肌を寄せあって笑いあった。
ーENDー
【重要ではないけど】あとがき→←Scene39 久しぶりの笑顔
ほらほら、あの人から言いたいことがあるみたいですよ☆
シスコ「お前はオレだけ見とけばいいんだよ」
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通行人 - ふと思い出して、久しぶりに来てみました。やはり引き込まれる。 (2019年9月5日 19時) (レス) id: 7f966a9c98 (このIDを非表示/違反報告)
瀬央(プロフ) - 美桜さん» ありがとうございます!少ない脳を振り絞って書いただけありました(笑) トプ画のことまでお気づきとは…さすがです! (2019年2月15日 23時) (レス) id: a6baa0d096 (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - あと、トプ画ですが、人物を抜いてオーダーされていましたね!そこがとても内容と合っていてさすがだな〜とセンスに感動しています 次作品も楽しみに待っていますね〜^^ (2019年2月15日 22時) (レス) id: 02de3cf915 (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございました!!!フブキもシュウも彼等らしい爽やかな感じで、読んでいて温かくなりました^^とても読みやすい文章に文間、ストーリー構成、とても勉強になります!私も瀬央さんを見習って、風景と心理描写をシンクロさせたラストへ進みたいです (2019年2月15日 22時) (レス) id: 02de3cf915 (このIDを非表示/違反報告)
瀬央(プロフ) - みずきさん» そう言ってもらえるととても嬉しいです。ベイバをこよなく愛してるから、学校の作文より本気になって書いてるかもしれません(笑) (2019年2月12日 23時) (レス) id: d89c1d2e97 (このIDを非表示/違反報告)
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