プロローグ【なゆ】 ページ3
物心ついた時から、
自分を殺して生きてきた。
普通に人間でいないと、
姉のようには陰口を言われてしまうから。
普通じゃない人は弾かれていく
世の中の不条理を知っていたから。
出入り禁止の紙が貼られた屋上の扉
この学校で見るのが最後になるであろう紅葉が散っていく中
ボクらは初めて喧嘩をした。
普通に生きていたいボクと自分を大事にしたい姉
何かの弾みでここまでの大喧嘩に発展したんだろう。
その時の姉の言葉が、ボクを変えた。
「瑞花はずっと苦しそうだよ。」
苦しくないんてなかった。
否、苦しくないと思い込ませていただけだった。
それを姉は見抜いていたわけだ。
苦しかった。
自分で自分を殺して生きていくのが。
苦しかった。
自分の好きを好きと言えないことが。
苦しかった。
自分で自分を苦しめていることを理解するのが。
仲直りの印に、ボクらは約束を交わした。
今からじゃなくていい。いつか、自分が自分でいられるようにしよう。
いつか、なんて生ぬるいものでいいのかと思った。
でもそれは、優しさだと思った。
その時から髪を伸ばし始めて、
高校でやりたいことリストを作り始めた。
自分と同じような人たちと、楽しく青春を送りたい。
神山高校入学式、当日
リボンをつけて、スカートに足を通した。
自分を貫くため、自分が自分でいられるようにするため。
ボクは人生最大の冒険に出た。
部屋に貼られた紙に書かれた赤文字
『青春部を立ち上げる！！』
これがボクらしい、ボクの生き方
【青春⭐︎ラバーズ】
続く
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