【アンナチュラル】白いキリン (ページ9)

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9真実の愛ページ9

裁判所から出て、立ち止まる。

久しぶりの外の空気は相変わらず冷たいが、日差しはあの日より暖かくなっていた。

雲がちらほらあるの空のもと、あの女の姿を見つける。

俺はそいつの腕をつかんで引き留めた。

「お前は、犯人の目星はついてるのか」

「？……なんだお前か。関係者に捜査情報流せるわけないだろ」

掴んだ腕に驚いて振り払い、あからさまに嫌な顔をする。

中堂はそんなことは気にせず、関係者には話せないと言わたことに苛立ちを隠さない。

「クソだな」

「証拠不十分で不起訴処分。疑いが完全に消えたわけじゃないからな」

「あんなもん流しやがって」

「うるせぇ、本当はお前を擁護なんてしたくなかったよ」

「お前らは俺が犯人だと信じて疑わねぇな」

「あの映像、誰が苦労して流してやったと思ってんだ。これで犯人だったらクビだぞ？折角、捜査一課になれたのに」

「フン、俺を無罪にしたことについて、お前は間違ってない」

「私は、お前が犯人かどうか分からなかった。多くの人間が見極めた結果がこれだっただけだ」

今回の件で、中堂は警察が大嫌いになったが、この女刑事の事だけは悪くないと思った。自分の能力を疑い続け、少数に耳を貸す。三日三晩自分の取り調べをしてきた、自信の塊みたいなやつらとは大違いだ。

真っ直ぐな眼差しが、その証拠だろう。

「俺は解剖医だ。お前に協力できることも多い。犯人を見つけるの手伝ってやる」

「はあ？……手伝ってくれの間違いだろ」

彼女は、少し考えて、中堂の誘いに気前よく返す。

協力してくれるのなら、誰でもよかった。この時中堂系が、別の人間に声をかけていたのなら、未来が少しは変わっていたのだろうか。

絶望は感染する、不幸は伝播する。二人を待ち受ける深溝はじっとこちらを見つめていた。