pair days -episode 4-【番外編】 (ページ8)

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「なに騒いでんの？」

『なんでもっ、ないから』

「あっそう？」

「A、しーっだよ」

藤枝に聞かれないように小声で囁きながら唇の前に人差し指を立てた。彼女は、拳くんのせいなのに…って目で俺を見ている。それが可愛くて、にんまり笑った。いつものようなイチャイチャは出来ないけど、こういう秘密のやりとりも良いかも。

キッチンは目隠しにちょうど良いから今後も隠れてキスするにはもってこいかも知れない。またチャンスがあればキスしちゃおうなんて考えも出てくるが、彼女に警戒されそうではある。

『もう拳くん、リビング行こうよ』

はーいと返事をして２人で移動すると藤枝が、お疲れ様ですと声をかけてくる。藤枝はいつものことのようにハンドクリームを手に取ってAへ渡している。

「ほらよ」

『ありがとう、祥』

「あ、そうだ。ふくらさん、この間見つけたんですけど、藤宮作品考察サイトのアドレスいります？」

「藤枝ってよくそういうの見つけてくるよね、一応教えてもらおうかな」

「本屋大賞ノミネートされて藤宮ファンも活性化してるせいですかね。ＳＮＳとかでも流れてきますよ。いま送りました」

「ありがとー」

送ってもらったサイトをちょっと見てみようかなと、ラグの上に座りローテーブルにスマホを置いて読み進めていく。視界の端でAがソファに座ってハンドクリームを塗り始めたのが見えた。そのままスマホに目を向け読んでいると、Aが小さく ”あっ“ と声を発したのが聞こえた。

視線を向けるとハンドクリームがまだ塗り切れておらず、ベタベタしているように見える。あの顔は困っているようだ、もしかして多く出し過ぎちゃったのかな？俺は多い分のクリームを引き受けようと、スマホを画面オフさせ、もらってあげる〜と言おうとしたら、彼女は藤枝の方を見た。

『祥いい？』

「んー、はいよ」

Aは自然に流れるように藤枝の手へクリームを塗り付けた。まるでそれが当たり前のような光景…なんか悔しい。いや２人がいつもやってることなんだろうから理解はするが面白くはない。俺が先に気づいていたのに！

「A、どうして藤枝にっ」

『えっ、あの拳くん、急にどうしたの。祥がどうかした？』
　
　
　